『ミステリマガジン』2011年9月号No.667【特集 新生ポケミス宣言】、『S-Fマガジン』2011年9月号No.666【SFスタンダード100ガイド PART I】、『幽』vol.15【特集 ゴーストハンター/震災と怪談文芸】

 『ミステリマガジン』の特集は「新生ポケミス宣言」。なにが新生ってデザインが変わったという話なので、新デザイナーの水戸部氏インタビューがメイン。北欧ものが増えたりというのもあるけれど。

 あとはクレイグ・ライスのマローンもの「平穏な人生」と、ダグ・アリン「ライラックの香り」と、ハメット「チューリップ」の後半と、児島清追悼。追悼といっても児島氏のようないわば「ファン」の追悼特集は難しいのではないかと思ったところ、各氏コメントのほか、氏の「愛した小説たち」リスト、解説と書評の再録という構成でした。

◆気になる新刊は、ポケミス『特捜部Q 檻の中の女』、フォン・シーラッハ『犯罪』、ディレイニー『ダールグレン』、バイヤール『シャーロック・ホームズの誤謬』、『目的をもたない意思 山川方夫エッセイ集』、マルコヴィッチ主演『アイ・アム・キューブリック!』、連続アニメ『旋風の用心棒
 

 SFマガジンの特集は、文庫版『SFハンドブック』刊行から10年ひとくぎりの新たなガイドということだそうです。樺山三英エリクソン『黒い時計の旅』)と新城カズマ銀河帝国衰亡史)ほかの「マイ・スタンダードSF」エッセイと、リスト&ガイド&年表のほか、コードウェイナー・スミス「アルファ・ラルファ大通り」再録。数あるなかからこれ一篇のみを選んだ理由は不明。

「乱視読者の小説千一夜(9)」若島正は、数学小説。というか数学グラフィック・ノベル。

◆気になる新刊。かいじたかし『僕の妹は漢字が読める』は、「美少女萌えが価値観の中心になり、文字もひらがなと記号だけで表現される」世界が舞台。パロディ度が高ければ面白そうです。ラノベからは大樹連司『オブザデッド・マニアックス』も。ロメロ作品同様「ゾンビという存在を通して人間の愚かさをあぶり出す」。ディレイニー『ダールグレン』、フォン・シーラッハ『犯罪』。

 ほかには、第一(!)短篇集『希望』刊行記念「瀬名秀明インタビュウ」、「大森望の新SF観光局(23)」はビッスン&ウィリス対談やチャン・インタビュウの抜粋、「現代SF作家論シリーズ」は岡和田晃によるジーン・ウルフ論。ディレイニー『ダールグレン』特集として、『ダールグレン』徹底解剖と、再録短篇「時は準宝石の螺旋のように」が掲載されていますが、『ダールグレン』をまだ読んでいないのでひとまず保留。
 

 『幽』の今月号は興味のないものだらけでした。そんななかで良かったものは、「ゴーストハンター特集」より、『英国幽霊案内』作者のお孫さんインタビュー、南條竹則「ブラックウッドの幽霊狩り」、堤邦彦「幽霊のいる日本仏教史」、京極夏彦×諸星大二郎対談。諸星氏の熱狂的ファンである京極氏が、自らの作品解釈を一方的にしゃべくりまくって、諸星氏が「そうですね」と言っているだけの、凄まじい内容でした。ある意味、笑った。

 笑ったといえば「怪談実話と小説の間」と題された樋口明雄×平山夢明×福澤徹三の鼎談もむちゃくちゃ面白かったです。

「櫛を拾ってはならぬ」山白朝子

「短歌百物語」佐藤弓生からは、「タクシーの後部座席が祭域となる 沈黙のぼくらを乗せて」黒瀬珂瀾。どことなくエロチックな歌ですが、それはさておき「ぼくら」がいったい何者なのか――を、そう解釈しましたか。しかも運転手視点の物語にされたために「ぼくら」という一人称がいっそう歪んで見えます。

「幽的民譚」(3)南條竹則。英国「バラッド」の紹介。「魔性の恋人」「醜い蛇」「ウィリーの妻(抄)」の三篇。

第二特集「震災と怪談文芸」では、一つには作家たちが震災体験を寄稿。個人的には勝山海百合水沫飛人の二人の寄稿が嬉しい。水沫氏のはさらっと幻想短篇です。さらには泉鏡花の震災体験記「露宿」を掲載。あまりの不安や希望から、何でもない風景に怪や霊験を幻視する終盤は圧巻です。字ちっちゃすぎ。しかし震災特集でもって大胆な表紙です。

「江戸怪談実話の迷い道(5)」高原英理。『北国奇談巡杖記』より。

「スポットライトは焼酎火(15)」は、特別版と銘打って、綾辻・小野両氏による、東雅夫インタビュー。
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