『名探偵に薔薇を』以来ひさびさのオリジナル・ミステリ小説は、『スパイラル』ノヴェライズみたいなノリの作品でした。女性キャラの性格や「鋼人七瀬」というセンスはモロです。
十一歳のときから妖怪たちの「知恵」を務めることになった岩永と、あることが原因で妖怪に恐れられる体質を持っている九郎の前に、「鋼人七瀬」と名づけられたアイドルの亡霊が現れる。亡霊を滅ぼすために、亡霊のもととなっている噂を消すためのもっともらしい「虚構」を組み立てるのであった……。
特異な設定ながら、ミステリの約束事の根幹をさらっと突っついているのがこの人らしい。ただし肝心の「虚構推理」部分がそれほど魅力的でもなく目を見張るような解決でもないのがちょっと尻すぼみでした。四重の解決に罠を仕掛けるあたりの、ミョーに細かい知恵比べ騙し合いの心理戦はよかったのですが。
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