『アンダーカレント』豊田徹也(講談社アフタヌーンKCDX)★★★★☆

 凡手が描けば安手のトラウマものになりかねない過去。夫に逃げられ休業中の風呂屋を風来坊が手伝いに訪れる、という昭和の映画のような設定。――なのに何でこんなに面白いんだろ。

 描写がしっかりしている、というのはあると思います。見えていない細かい部分までしっかり描かれているからこそ、細かい心理も伝わって来るのでしょう。

 たとえばドライブ中におにぎりを食べているところ、おにぎりを食べ終わった指を舐めるところ、サングラスをかけている人の横顔に目が見えているところとか……。そういう何気ない当たり前のシーンにどきっとします。

 今はこのくらい普通なのかな。漫画はちらほら読むくらいでわからないのですが。『ハックス』を読んだときも、先輩のスカートと新入生のスカートの長さが違っている細かさに驚いた記憶があります。

  


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