『読楽』2012年4月号

「化石少女」麻耶雄嵩
 ――部員が神舞まりあ先輩と桑島彰の二人しかいない古生物部は、廃部の危機に陥っていた。そんな折り、新聞部部長が殺されて、古生物部にあったシーラカンスのかぶりものをかぶった犯人の姿が目撃されていた。変人のまりあ先輩は、事件を解決することこそが部存続への近道だと思い込み……。

 麻耶雄嵩の新シリーズ。どういう狙いのあるシリーズなのかは、今後も読んでみないとわからない部分もあるけれど、たとえば、探偵役が変人だから誰も推理を信用しない――というのが、一つ気のついたところです。「逆さ」というキーワードや○○の扱いなど、チェスタトンのあの作品を連想させます。
 

「『クロス・ファイヤー』刊行記念 女子プロ野球の魅力」柴田よしき×小西美加×川端友紀
 ビジョンをしっかり持っているというかクレバーというか自己分析ができているというか、お行儀のいいスポーツ選手インタビューとはひと味違いました。
 

Drop by drop相沢沙呼
 ――クラスのレベルが低すぎる。竜さんは「高校なんてそんなもんだ」というけれど、この高校だけが、そうなんだ。アタマが悪くて、偏差値が低くて……。ナミだけは、あたしと同じだと、思っていた。他のクラスメイトは、頭が悪くて、馬鹿な話題でしか盛り上がれないと……。

 「短篇競作『春、出会い』」と題されたうちの一篇。他の競作者は小路幸也・吉野万理子・関口尚。学校で孤立化している語り手。最後の一文がすごい。かぎりなくどうでもいい行動なのに、語り手にとっては世界を変えるような一歩なのだというのが、ひしひしと伝わって来ます。
 


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