「ゾンビ世界分布図」一日寺タロ
いわゆる「ゾンビ」に限らず世界の「生ける死者」についてまとめ。この考察はけっこう新しいのに、掲載作のメンツが古くさいのがもったいない。
「柩は死者のために」ロバート・シルヴァーバーグ/植草昌実訳(Back from the Grave(初出題 Coffins are for Corpses),Robert Silverberg,1958)
――目を覚ますと柩のなかだった。死んでもいないのに埋められてしまったんだ!
角川文庫『幻想と怪奇1』「墓場からの帰還」で既読。
「余計な乗客」オーガスト・ダーレス/植草昌実訳(The Extra Passanger,August Derleth,1947)
――アローディアスは伯父を殺してから夜行列車の客室に戻った。そこにはいつのまにか一人の乗客がいた。「失礼ですが、客室をお間違えですよ」「いいや。伯父の家に行っていたのか?」
「伯父の家」と具体的に名指しされるのがひときわ怖い。
「骸骨狂想曲」ロバート・ブロック/間羊太郎訳(The Skeleton in the Closet,Robert Bloch,1943)
――洋服ダンスを開けたら、骸骨があった。「このフックから外してくれんか。わしも一杯やりたいんだ」
ダーレス作品と同じようなネタを用いられていますが、正統的ホラーのダーレス作品に対して、こちらはトリッキーな作品に仕上がっています。
「新生JA文庫ラインナップ」
うえむらちか『灯籠』、青柳碧人『ヘンたて』あらすじ紹介のほか、『生者の行進』の石野晶インタビュー。
「チロルの城」グラント・アレン/宮澤洋司訳(The Episode of the Tyrolean Castle,Grant Allen,1897)
――リーベンスタイン伯爵の城を訪れたチャールズ卿は、気に入った城を何としてでも購入したくなった。
これはこういう形で読めたのはありがたい。○○シリーズものだと知っていて読むとミステリ的なネタの部分の見当がついてしまうでしょうから。
「短篇ミステリがメインディッシュだった頃(3)」小鷹信光
ダールの短篇「Collector's Item」。わかってみれば納得のタイトルです。
「自由へのパスポート」ロバート・トゥーイ(Passport to Freedom,Robert Twohy,1969)
――オフィスのボスからの電話は、愛人殺しの罪をかぶってほしいというものだった。出所後の生活と安全は保障するというが……。
無茶苦茶うさんくさい話なのに、自分から飛び込んでしまうところがもう……。
「ジークの長い腕」C・B・ギルフォード(Zeke's Long Arm,C. B. Gilford,1958)
――兄のジークが結婚すると、オレンの居場所はなくなってしまう。オレンは銃を手に取った。「兄貴さえ消えりゃいい」
図らずもゾンビ特集だったため当然そう来るかと思っていたら、あに図らんや、こう来ましたか。
「『ブラック・ブレッド』監督インタヴュー」
「書評など」
◆『森の奥へ』ベンジャミン・パーシーは、「森の奥への分け入っていく」文芸寄りの作品。
◆『エラリー・クイーンの災難』は、クレイトン・ロースンがベイナード・ケンドリックと合作したらしき「どもりの六分儀の事件」が載っているのが気になります。『野性の蜜』オラシオ・キローガはキローガの短篇集。
◆『水晶の鼓動』麻見和史は、「警察小説と本格ミステリのハイブリッド」。『ホッテントット・ヴィーナス』は気になってた。『史上最強のインディアン コマンチ族の興亡』
◆『ビリー・ワイルダーのロマンティック・コメディ』瀬川裕二は、数ある似たような類書かと思いきや、「一画面ごとに註釈を加えていくアノーテッド・エディションみたいな本になっている」そうで、めちゃくちゃ読みたくなりました。
「見知らぬカード 《謎》の謎、その他の謎(4)」山口雅也
――財布に入っていた見覚えのないカードを見せると、同僚は顔色を変えた。課長は腹を立て、妻は嫌悪し、母親は笑った……。
この作品は日本が舞台なので翻訳という設定もなくなりました。リドルストーリーとしては単純な「牛の首」や「赤い洗面器」系の話です。