【沖縄怪談大全】
沖縄と言えば水木しげるによるあの印象的なキジムナーとガジュマルの木だけしか知らないのですが、今月号の表紙を見るだけでも別世界です。こんな場所が現実にあるということが何よりも素晴らしい。
「逆立ち幽霊(抄)」伊波南哲
沖縄でいちばん有名な怪談で、大衆演劇の人気演目だそうです。ビジュアル映えしそうで、さもありなん。死体の足に釘を打たれた女が逆さづり状態の幽霊となって、釘をはずしてもらうために夜な夜なあらわれ、念願がかなうと釘を打ちつけた前夫に復讐する――という、意外とふつうの因縁譚。
「第7回『幽』怪談文学賞決定!」
選考会では「レベルは高いけれど傑作がない」みたいな書かれ方をしていましたが、ヘンに個性的すぎるものよりは今回の二篇のようなものの方が好みでした。クセが強い作品は(水沫流人や勝山海百合のように)ツボにはまるとどっぷりはまりますが、はまらないと拒否反応が大きいという反動と隣り合わせなので。
「地蔵の背」織江
――「地蔵さんはな、子どもを憐れんで、救うてくれる菩薩さんや」 その祠は、地蔵盆のときしか開かない。なのに、妹ののりこは「お地蔵さんが来いって言うてるねん」と我儘を言って……
「埃家」剣先あおり
――実家の両親がおかしかった。キュルキュルと変な音を出す。風呂はカビだらけで、料理はグズグズに煮くずれていた。二階は人に貸しているから絶対に入るなと……。
「スポットライトは焼酎火」18「小二田誠二『江戸怪談を読む 死霊解脱物語聞書』」
累物語の元ネタの翻刻。