日本作家特集
未知の作家二人に、既知の作家二人。未知の作品はどちらも肌に合いませんでした。
「コラボレーション」藤井太洋
――持ち主もないまま放置されインターネットでのたうち回るサービスを「ゾンビ」と呼ぶ。学生時代に俺が作ったサービスがまだ生きていたことに驚きと懐かしさを覚え……。
「無政府主義者の帰還(1)」樺山三英
――アナキストのOが烏有亭を訪れたのは、昭和五年のことだった。現在の彼はよりにもよって政府の密偵。烏有亭主人は立ち退きを拒み、居住者たち各自が増築を繰り返し続けていた……。
倉橋由美子『スミヤキストQ』や石川淳「鷹」のような政治幻想小説を起こさせる世界で、二笑亭を思わせる奇想屋敷で起こる、殺人事件。――という、たっぷり詰め込んだ贅沢な連載が始まりました。そう言えば伊藤計劃『屍者の帝国』の冒頭を読んだとき感じたのも、こういう贅沢なわくわく感だったことを思い出しました。
「エコーの中でもう一度」オキシタケヒコ
――失踪した音楽家を探してほしいという依頼の裏にある目的を見抜いた所員は、一人の盲目の女性を呼び寄せた。
「ハドラマウトの道化たち」宮内悠介
――人種も宗教もばらばらな住民たちをまとめたのがジュリア・サイード。打ち出した教義はただ一点。多様であること。アキトが接触したタヒルたちの目標は、アラブのアラブによるイエメンを取り戻すこと……。
DXシリーズも四作目。書き下ろし一篇を加えて春に単行本化されるそうです。今回はこれまでよりもDXの関わりが大きくなっていて、個人の人格を転写されたDXが主人公たちと行動を共にする――とだけ書くと何だか別のシリーズの話みたいです。
「書評など」
◆ケイト・アトキンソン『世界が終わるわけではなく』は牧眞司氏評。「非情な日常と緩慢な日常、どちらも現実だが重なったとたんナンセンスに転じてしまう。」
「北極圏のフリカケはどうしてみんなピチピチ跳ねるのか。」椎名誠のニュートラル・コーナー
「乱視読者の小説千一夜(24)洞窟の王」若島正
銀背で出ていた『角笛の音の響くとき』の著者サーバンについて。「『もし第二次大戦でドイツが勝利していたら……』というテーマを扱った」幻想小説。
『闇の国々』 第二巻刊行! ブノワ・ペータース&フランソワ・スクイテンインタビュウ
物語よりも信憑性。
「MAGAZINE REVIEW 〈F&SF〉誌 2012.5/6〜7/8」橋本輝幸
「〈カンパニー〉の時間をはじめよう!」ケイジ・ベイカー・インタビュウ/中村仁美訳
「クリストファー・レイヴン」シオドラ・ゴス/鈴木潤訳(Christopher Raven,Theodora Goss,2011) ――学園を再訪したかつての少女たち。胸をよぎるのは、学生時代の夢に出てきた詩人のことだった。(袖コピーより)
「フランケンシュタインの娘たち」に続いての登場作品は、やはり現代によみがえったゴシック・ホラー(?)。ゴリゴリの乙女ゴシックです。少女だったころと変わらない(留まらざるを得ない)人もいれば、成長しながらもどこか懐かしく思う人間もいて、思えばそれはそのまま誰もの思春期そのものであったりするのかも。