『放浪息子』『宙のまにまに』『今夜は昨日の星が降る』『スラムダンク』『ナナマルサンバツ』

放浪息子』(1)〜(13)志村貴子
 12・13巻にオガツカヅオがあとがき漫画を描いているので、1巻から試しに読んでみたところ……現時点で5本の指に入るくらいに好きな漫画家さんかも。

 こういう、空白を大事にする漫画が、かなり好きです。

 コマ・画面の空白・余白、セリフの空白、時間の流れの空白・間……その〈語らない〉手法に引き込まれる。心地よい。

 物語は、「おんなのこになりたいおとこのこ」と「おとこのこになりたいおんなのこ」――といっても、キツイほどシリアスというわけではなく、たとえて言うなら小学生のふつうの性の悩み、ほどの小学生ライフが描かれています。出てくる小学生がみんなかわいい。かれらが比較的理解のある人に恵まれているのは幸いでした。

 といっても現実から目を背けているわけではなく、生理、夢精、第二次性徴、いじめ、不登校、仲違い……といった当たり前のことから逃げずに向き合っています。正直いってシュウくんの下着姿はヒキましたが、それすら逃げていません。

 似たような点で、すごい、と思ったのが、小学生で始まったこのはなし、中学、高校と現在まで連載が続いているのです。

 それから数年後……という形で逃げを打つ(逃げているのは読者か作者か編集者か出版社かはさておき)作品がほとんどであるなか、この漫画はむしろ困難な道に向かって進んでゆきます。漫画だから薄められている、というのはあるでしょうけれど。現実で高校生だとさすがに。。。?

 高校生になってシュウ君が普通の表情をするようになってきたのが印象的でした。13巻P.149「二鳥くんからも推薦してよ〜」、P.157「知りたくないけど……」なんて漫画っぽい表情するような人じゃなかったですから。

 お目当てのオガツカヅオは、第12巻に怪談2編、第13巻に怪談1編。「怪」視点の『放浪息子』。

宙のまにまに』(全10巻)柏原麻実
 天文部、といっても星の魅力よりはラブコメにやや比重が傾いている印象。

 転校を繰り返す主人公が、高校生になって戻ってきて出会ったのは、星の魅力星のトラウマを教えてくれた幼なじみの一つ上の先輩でした。発足したばかりで人数の足りない天文部になかばむりやり入部させられ……。

 みんなで寝そべって星を見上げるシーンは、それだけで心が落ち着き安らいでゆきます。

『今夜は昨日の星が降る』柴谷けん
 小惑星が衝突し、地球が破滅する……タイムリミットはわずか。「魔女」に頼るしか方法はなかったが……。

 つばな推薦なので購入してみました。ギャグありホラーありSFあり。何でもありでなおかつきっちりすべてのピースがはまっているという連作長篇。これだけいろいろな話をひとつにまとめる手腕に脱帽です。
 

スラムダンク』(全31巻)井上雄彦
 「あきらめたらそこで試合終了だよ」

 どんな場面にも使える言葉であるだけに、特に試合の終盤になるたびこの言葉が甦って目頭が熱くなります。三井君がスタミナがないという設定だけに、なおさら。

ナナマルサンバツ』(1)杉基イクラ
 クイズ研究会。なのですが。。。書道、かるた、天文、アニメ、吹奏楽、映画、落語、軽音、現視研……これまで読んだ文系サークル/部活ものは、どれも面白かったし、何より主人公たちが楽しんでいる面白がっているのが伝わってきました。だけど本書を読んでも、申し訳ないけれどキモイとしか思えませんでした。早押しのルールや型はわかったけれど、だからといってそれで興味が惹かれるか、というと。。。『もえタイ』はよかったけど『砂糖菓子』漫画化はイマイチだったし、個人的には当たり外れのある漫画家さんでした。

なにかもちがってますか』3、『のりりん』6 鬼頭莫宏

 イッサくんが完全にボケボケな人になっちゃいましたね。重要な新キャラが二人も登場したのに、世直しはぜんぜん進みそうにありません。でも人はちゃんと(?)殺していたりして、殺人ギャグ漫画という新しい境地を開拓したのか……も。

 サイクリング、ではなくツーリング。レギュラー総登場の楽しさがそのまま自転車の楽しさを伝えています。杏さんの本気度がちょっとこわい(^^;

『ヴァーサス・アンダースロー相田裕
 『GUNSLINGER GIRL』の相田裕による同人誌。野球生徒会漫画(体育会系の)。何となくサンドロとペトラを思い出す。

    


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