『乱鴉の島』有栖川有栖(講談社ノベルス)★★★★☆

 火村シリーズで初めて面白いと思えた作品です。

 秘密と事件があまり関係ないとはいえ、あっさりすぎるほどのロジックで犯人を特定するところには感嘆しました。変に複雑にしないこういうきれいな解決編こそ有栖川作品だなと思います。しかもいったんは容疑圏外に置いた人物を同じ理由から容疑圏内に入れるところは見事でした。

 無駄だとしか思えない単なる時間稼ぎの理由が明らかにされた瞬間も、あっと目から鱗が落ちました。

 臨床犯罪社会学者の火村英生は、友人の作家・有栖川有栖と休暇に出かける。だが、彼らがたどり着いたのは、目的地とは違う場所だった。鴉が群れ飛ぶ絶海の孤島、通称・烏島《からすじま》――。そこには、世間と隔絶された生活を送る作家、謎の医師、奇妙な起業家など、不可解な目的を持った人々が集まっていた。訝る火村たちの前で、殺人事件が発生する。事件の背後に隠された彼らの「秘密」とは何なのか!? 「本格ミステリベスト10」堂々の第1位に輝いた傑作ミステリ。(カバー裏あらすじより)

   


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