「対談 大山誠一郎×逢坂剛 本格ミステリとハードボイルドの狭間で」
大山氏はほんとうに逢坂さんが好きなんだなあというのが伝わってくる対談です。こういうのは気持がいいですね。
「古都パズル」有栖川有栖
――五億円相当の宝物捜しを兼ねて、マリアの別荘で合宿することになったアリスたち。合宿に参加できないモチさんが、宝探しの暗号を自作してアリスたちに挑戦した。
長篇『孤島パズル』の前日譚。ということでタイトルも駄洒落。「ミステリ研究会」特集の一篇です。暗号のキーとなる言葉の意味がわかっても、そこからさらにもう一押し発想が必要なのが、よい暗号です。そして単なる駄洒落と思えたタイトルも、ちょこっとだけヒントだったのでした。あろうことかこの作品の江神さんは名推理をしてくれません(^_^;
「針宮理恵子のサードインパクト」青崎有吾
――早乙女と恋仲になって、もう三ヶ月近く経つ。――すみません、開けてください。早乙女の声が耳に届いた。声は張り上げられ、少し震えていた。教室でパート練習していて、ゲームに負けた早乙女が飲み物の買い出しに行き、中の誰かが鍵を閉めた。そういうことか?
対談の大山誠一郎氏にしてもそうですが、この作品もミステリ研が舞台なわけではなく著者がミステリ研出身ということのようです。最新作『水族館の殺人』の前日譚? 裏染シリーズの一篇。謎からして無理繰りだった「もう一色選べる丼」と比べても、いじめ問題がフィーチャーされている本篇は謎物語として自然な仕上がりになっています。
「宇宙倶楽部へようこそ!」鵜林伸也
――星が嫌いな僕が天文部を訪れたのは、離婚後に一度も会ったことのない父親の手がかりになると思ったからだ。母宛のメールに添えられていた星空の写真と「四月十八日午後七時ごろ、ちょうどこの写真と同じように見えるはず」という文章。
見覚えのある名前だと思ったら、「ボールがない」の著者でした。これはミステリ研究会特集の一篇ではありません。明らかに枕とわかる枕を長々と書いちゃうところが「まだまだこれから!」という感じで初々しいです。惹句に「開幕!」と書かれてあるということはシリーズもののようです。学園ものの宇宙ネタでこれ以上にスケールの大きな意外性を出すのは難しいのでは……といらぬ心配をしてしまうほどの驚きが待ちかまえていました。
「裏は違う顔」谷原秋桜子
――安田龍生のストーカー行為から逃れて鈴木と名を変え転任した私は、顧問となった演劇部で、ニシザカミズキという少女のような男子生徒と出会った。「美紀先生って僕の好みのタイプなんです。妹が通っている高校で、先生によく似た人に――」
微妙に変なタイトルですが、それにはちゃんとした理由があるのです。
「私はこれが訳したい(11)」三角和代
ジーン・ウェブスター『JUST PATTY』
「銃の細道(7)」小林宏明
アサルト・ライフルの巻。
「ミステリ・ライブラリ・インヴェスティゲーション(11) ウィークエンド・ブックス編その1」川出正樹
アリステア・マクリーン『北極基地/潜行作戦』といった海洋冒険ものから、性愛小説まで。
「書評など」
アダム・ジョンソン『半島の密使』はピュリッツァー賞フィクション部門受賞の北朝鮮スパイ小説。ほかに『皆川博子コレクション2 夏至祭の果て』など。
「レイコの部屋」
『本の雑誌』編集部の松村さん。
「BILIPO探訪」
パリのミステリ図書館。