『FinalPhase』朱戸アオ、『大奥』(10)よしながふみ

『FinalPhase』朱戸アオ(PHPコミックス)
 『ネメシスの杖』の著者による、単著デビュー作。埋め立て地で発生したウイルス感染症。発症した患者は「溺れる」と言い残して死んでいた。鈴鳴医師は疫研の助けを借りて、ウイルスの種類と感染源を特定しようとする……。ネメシスの杖』の敵が組織やシステム、そして犯人だったのに対し、本書で戦うべきは病そのもので、そういう意味ではよりストレートなサスペンス作品でした。

「私たちはベストしか尽くせないのよ」
 「ベストを尽くす」が口癖の鈴鳴に向かって、疫研の羽貫は「自分の力に限界があるのを認めてるいい言葉」だと言います。パンデミックの収束に向けて最善を尽くしていても、どうにもならないことがある――そんな状況に直面した鈴鳴が言うのが上記のセリフです。ベストを尽くしている人間の言葉だからこそ、重みがあるます。
 

『大奥』(10)よしながふみ白泉社JETS COMICS)
 赤面疱瘡の撲滅に向け、人痘を成功させようとする青沼や源内たち。だがよりよい世を目指す意次や源内たちの努力をよそに、政権奪取を目論む治済は着々と網を張っていた……。

 徳川治済は、『大奥』に登場した将軍や将軍家の人間のなかで、今のところ唯一、大義を持たない政治的人間です。春日局が近いといえば近いでしょうか。どうやら次巻以降は、そんな治済の息子・家斉の代となりそうなので、これまでのような人間ドラマの方はどうなるのか注目です。カバーのイラストで伊兵衛がいちばん偉そうなのが可笑しくてたまりません。

  


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