『アイアン・ハウス』ジョン・ハート/東野さやか訳(ハヤカワ・ポケミス1855)★★★☆☆

 『Iron House』John Hart,2011年。

 『ラスト・チャイルド』のジョン・ハートの最新作は、組織を抜けて追われる殺し屋の話です。

 ――が、そこはジョン・ハート。愛情だの、それゆえの苦しみだのがメインを占め、殺しの世界の様子がピンと伝わって来ません。組織を抜けたマイケルを追う兄貴分のジミーの残虐さだけはたっぷり描かれていましたが。

 しかし本書も末尾の538ページに至り、そんな愛情や苦しみが、最大の残酷さとともに大きな感動を生み出していました。こういうところはなるほど普通の犯罪小説家には書けないかな、などとも思いました。☆(※生き別れた実の弟たちを養子にするための口実としてわざわざ不妊治療までする覚悟)

 そこがらしいといえばらしいのですが、殺し屋が主人公にしては総じて甘ったるい作品でした。

 しかしそれにしても装幀がダサイ。文庫版だとそうでもないんだけど。。。ポケミス版はビニールハウスみたい。

 凄腕の殺し屋マイケルは、ガールフレンドのエレナの妊娠を機に、組織を抜けようと誓った。育ての親であるボスの了承は得たが、その手下のギャングたちは足抜けする彼への殺意を隠さない。ボスの死期は近く、その影響力は消えつつあったのだ。エレナの周辺に刺客が迫り、さらには、かつて孤児院で共に育ち、その後生き別れとなっていた弟ジュリアンまでが敵のターゲットに! マイケルは技量の限りを尽くし、愛する者を守ろうと奮闘する嗚呼ミステリ界の新帝王がかつてないスケールで繰り広げる、緊迫のスリラー!(裏表紙あらすじより)

 


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