『S-Fマガジン』2014年2月号No.695【日本作家特集】

「SF COMIC SHORT-SHORT(1)」ツナミノユウ

「ナスターシャの遍歴」扇智史
 ――旧友のナスターシャが語る不思議な寓話は、繭子に激しい好奇心と動揺をあたえるが……。(袖惹句より)

 妄想ではなく、拡張現実であった、というのが新しいというかSFではありました。
 

「亡霊と天使のビート」オキシタケヒコ
 ――うなされた息子の寝室を訪れた母の耳元でささやく声。確かに聞こえるのに録音されてはいないその声は不仲だった亡き祖母の声なのか。そしていったい何を伝えようとしているのか――。

 「エコーのなかでもう一度」に続く第二作は、科学ミステリ。録音されない声という怪奇現象とも思える謎が、論理的に解き明かされ、明らかになる極めて単純な真相は圧巻。
 

「自撮者たち」松永天馬

「カケルの世界」森田季節
 ――春奈が消えました。翔は部室で昨日の出来事を話した。春奈の声が聞こえる気がした。幻聴だろう。暗い影が――漆黒のサルのようなものがのぞいている。殺される!/『ニジイロの世界』のキャラグラフィティは、榛名の苦手なタイプだった。このゲームの売りはキャラクターが限りなく現実の人間に近いことだ。

 格闘&美少女ゲームを、ゲーム内から描いた上段と、プレイヤー視点で描いた下段。二つの視点の導入が、批判的なものではなく男の妄想的世界を補完するものであるところがユニークです。
 

「SFのある文学誌(26)恋愛も参政権もSFだった」長山靖生

「乱視読者の小説千一夜(36)きみはカーペンターを知らない」若島正
 

「書評など」
結城充考『躯体上の翼』はタイトルがかっこよい。それだけで読みたくなりますね。ほかにレオ・ペルッツボリバル侯爵』。漫画では小原慎司トニーたけざき『星のポン子と豆腐屋れい子』。出版社HPで冒頭を試し読み。「(露骨に)ジュヴナイルを想起させる」の意味がよくわかりました。
 

「なぜかぐや姫は高慢で桃太郎は独善的なのか」椎名誠ニュートラル・コーナー
 これはひどい

「近代日本奇想小説史 大正・昭和篇(7)〈日本少年〉の作家と少年冒険小説4」横田順彌
 ルブランの翻案『愛国小説 国境線』も紹介されていました。

大森望の新SF観光局(38)日本ファンタジーノベル大賞の二十五年」
 スポンサーが降りたために、日本ファンタジーノベル大賞が終わってしまいました。

「かわいい子」オースン・スコット・カード
 『エンダーのゲーム』映画化記念、シリーズ未訳短篇。

篠田節子SF短篇ベスト『ルーティーン』刊行記念エッセイ」牧眞司
 単行本初収録作品&書き下ろしを含む作品集。

「ウィンター・ツリーを登る汽車」アイリーン・ガン&マイクル・スワンウィック/幹遙子訳(The Trains that Climb the Winter Tree,Eileen Gunn & Michael Swanwick,2010)
 ――クリスマスの日、目覚めるなりサーシャは激しい違和感をおぼえた。いつもと決定的になにかが違う。父親と母親と祖母、大叔母が微笑み、弟たちがはしゃぎまわるいつもと同じクリスマスのはずなのに、何かが欠落している。そんな思いをサーシャは飼い犬のミスター・チェスタトンにぶつけるが、驚いたことに言葉が返ってきて……。(紹介文より)

 異世界を通した成長譚ならありふれていますが、これはそんな優しいものではなく、嫌でも成長せざるを得ない現実を突きつけられ、それを自分でつかみ取らなくてはならない、ちょっと苦いクリスマス・ストーリーでした。
 

 


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