『アフタヌーン』2014年5月号、『ひとりぼっちの地球侵略』5

 木村紺の新連載&新人読み切り2作!

おおきく振りかぶって』109「埼玉県大会10」ひぐちアサ
 ――千朶から二塁打を打った花井。田島はそれに続けるか――。一方の三橋と阿部も千朶打線を抑え続け……。

 相手チームのキャッチャーが心のなかでつぶやく「ああ こいつのリードすんの 面白ェだろうなァ」という台詞、これこそ『おお振り』の魅力です。
 

宝石の国』18「アンタークチサイト」市川春子
 ――フォスの腕につけた「なりそこない」の破片は、腕からはずれずフォスを包むように大きくなった。そこに折悪しく月人が襲来し、アンタークチサイトは一人戦いを挑むが……。

 こんなふうに感情を露わに戦う宝石たちを見るのは初めてです。それだけに悲愴感が漂っています。
 

『思春期シンドローム』(15)赤星トモ
 ――中学の友人たちの文化祭を訪れるはめになったキュー。友人や担任と鉢合わせしてしまい……。

 主要なキャラクターも固定されて来たし、テーマのようなものも少しずつ固まって来ました。今回は霊感少女と小説家志望と学生生活の一コマ。
 

『マイボーイ』(1)木村紺
 ――ペンギンジム久々の自主興行の結果は散々の四戦全敗。多額の借金を抱えたジムに残ったのは四人のボクサー、トレーナーは会長の娘。

 相変わらず一作ごとに絵柄を変える作者にびっくりです。響なんて言われなきゃ木村紺の絵だなんて気づきません。姉の華子とトレーナーの邑ちゃんにかろうじて『からん』や『巨娘』の面影が。『からん』終盤の大石先輩の試合は眺めているだけで面白かったので、またああいう迫力のある試合を描いてくれたらと思います。著者コメントが面白すぎる。
 

げんしけん 二代目』98「ハーレムの境界線上の彼方と此方」木尾士目
 ――斑目先輩の快気祝いに晩ごはんを作りにゆくことになった波戸と、それに付き添うことになったスー。図らずもハーレム展開となった斑目だったが……。

 登場人物は基本的にオタクといえども、朽木先輩を除けばみんなそれなりに常識人なので、ドン引きせずに笑えます。斑目先輩はホントいい人すぎるなぁ。
 

「虚ろ羽の飛ぶ海」永田礼路
 ――異種遺伝子が組み込まれヒト種以外の組織が15%を超えていれば人ではなく愛玩動物扱いすることが合法化された未来。幼時に胚操作され商品として監禁されていた少女ユズを助けたオトとハルは、加藤木警部に追われ……。

 2013年冬の四季賞藤島康介特別賞を受賞した方の読み切りデビュー。すでに言うことなしの完成度です。「料理が不味い」が単なる掛け合いではなく伏線になっている手練れです。「水没した都市」の雰囲気がもっともっと描かれていればさらにさらにいい作品になっていたと思います。
 

マージナル・オペレーション』11「村への訪問」
 ――集落への訪問チームに選ばれたキシモトは、ドンキーと呼ばれる無人装備運搬車に萌え、ふざける子どもを見て久しぶりに笑ったが……。

 シミュレーションだけでなくこういうところにも忘れずに顔を出すオタク設定。ほっとひと息つく回――だと思った矢先……。
 

『白馬のお嫁さん』1「三文未来の嫁探し」庄司創
 ――遺伝子デザインが一般化された社会。氏家清降が入ることになった高校寮には、Y遺伝子改造された「産む男」がいた。頼もしいお嫁さんとの結婚を目指す三人に振り回される氏家は――。

 ちょっと前まで連載されていた『勇者ヴォグ・ランバ』とは打って変わったSFコメディでびっくりですが、第一話タイトル「三文未来の嫁探し」というのが四季大賞受賞作「三文未来の家庭訪問」(未読)と重なっているので、もともとこういう作風の人なのかもしれません。コメディとしてかなり面白いです。
 

「氷上のクラウン―Final Judge―」タヤマ碧
 ――天才スケーターの娘いぶきと、4回転ジャンプにこだわる優馬は、ともに日本スケート界のホープだったが、いつしかいぶきは優等生を演じるようになり、優馬は衝撃と限界を超えることを求めていた。

 すでに審査員特別賞(ポータブル)と四季賞(未掲載)を受賞されている方の、本誌デビュー読み切り。ダブル主人公の成長と切磋琢磨。メリハリのあるスケーティング描写。邪魔にならない技術的な解説。エンターテインメント漫画の完成形に近いのだと思います。絵だけでも充分に魅せるのでフィギュアに詳しくなくてもまったく問題なく、けれど勢いだけではなく技術的な部分もしっかり描かれています。
 

『コトノバドライブ』3「夜の農道のこと」芦奈野ひとし
 ――農道を通っての帰り道、廃道に光る自販機の光に誘われて、道を逸れるすーちゃん……。

 日常によぎる怪異……とも呼べない怪異がたまらなく魅力的でした。漫画だからこそ「早く早く」「あぁあ」という「声」も文字になっていますが、実際に声は聞こえなくともこういう「感じ」というものは実際に存在するわけで、そうした恐ろしい雰囲気というのがよく出ていました。
 

『天の血脈』(23)安彦良和
 ――翠さんを社会主義に染まらせた菅野すがにひとこと言いに平民社を訪れた安積は、そこで大杉栄と再会し、堺利彦から嬉田教授を批判される。

 大杉栄がおちゃめです。
 

『ひとりぼっちの地球侵略』(5)小川麻衣子小学館ゲッサンコミックス)
 ――初めての夏休み、アイラや龍兄たちとプールに出かける岬一・大鳥先輩たち。町で目撃された大鳥先輩に似た少女……。束の間の休息のあと、戦いがやってくる……。

 基本的に可愛い絵なのに、人形と宇宙人の戦いのようなエグさもあるのがこの作品の魅力です。単にエグイだけじゃなく、エグさにセンスがあるのです。それにしても大鳥先輩の飛ぶシーンはかっこいいです。
 

  


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