『本陣殺人事件』横溝正史(角川文庫)★★★☆☆

 かなり久々に再読してみると、解決編が長すぎに感じました。それから、探偵マニアが犯行にかかわったからよりいっそう探偵小説っぽい事件になったというのは、理由としてはパッとしません。けれどもそれを補って余りある美意識、というべきでしょう。琴に日本刀といった、これでもかと言わんばかりのジャポニスム

 三本指の男は殺されたのだと記憶違いしていましたが、実際には自然死でした。三本指の男が道をたずねる理由の誤誘導は、本書のなかでもとりわけ印象的な真相です。

 犯人のキチっぷりと三本指の男の印象があまりにも強烈なので耽美な作品だったように記憶していたのですが、中篇程度の長さということもあってか、意外なほどドロドロしていませんでした。

 江戸時代からの宿場本陣の旧家、一柳家。その婚礼の夜に響き渡った、ただならぬ人の悲鳴と琴の音。離れ座敷では新郎新婦が血まみれになって、惨殺されていた。枕元には、家宝の名琴と三本指の血痕のついた金屏風が残され、一面に降り積もった雪は、離れ座敷を完全な密室にしていた……。アメリカから帰国した金田一耕助の、初登場の作品となる表題作ほか、「車井戸はなぜ軋る」「黒猫亭事件」二編を収録。

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