『黄金蝶ひとり』太田忠司(講談社ミステリーランド)★★★☆☆

 両親が五度目の新婚旅行に出かけているあいだ、洸はおじいちゃんの家に預けられることになった。生きるための「万能学」を標榜し、村人から一目置かれているおじいちゃんは、村の開発の提案にも頑として首を振らない。日本には棲息しないはずの黄金蝶を見かけた洸は、それを追いかけて鍾乳洞にたどり着いた。そこには守人を自称するテツと呼ばれる子どもがいた。やがて開発者が、村に存在するはずの「宝」を求めて鍾乳洞に侵入を企て……。

 ミステリーランドには特に子ども向けでもない作品もあれば、明らかに子ども向けを意識している作品もあり、ジュヴナイルも手がける太田氏のものした本書は当然後者。

 ――とはつまり、大人が読むとものたりないのです。あまり細かい心理描写などもないので、夏休みの冒険のワクワク感をあらかじめ共有していることが、作品を楽しめるかどうかの条件になります。

 テツとは何者なのか、黄金蝶が村にいるのはなぜなのか、おじいちゃんはどこに消えたのか、宝物の正体は何なのか――という謎はどれも弱く、敵対する開発者たちも兇悪な敵というよりはどちらかというとバイキンマンのようで、宝物の正体も壮大というか何じゃそりゃというかだし、テツの正体もお約束といえばそれまでですがとってつけたようで、暗号にちなんだタイトルの読み方だけがウケました。

 a fable about summer and children

 i am here you are not alone

 


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