『ボーンシェイカー ぜんまい仕掛けの都市』シェリー・プリースト/市田泉訳(ハヤカワ文庫SF)★★★★☆

 『Boneshaker』Cherie Priest,2009年。

 祖父と父の汚名をそそぎたい――。

 これだけ聞くといかにも青春小説っぽいのに、実は父の犯した罪というのが、金脈を掘るための発明品で町中を破壊し、ゾンビガスを掘り起こしてしまった……という出来事なのでした。

 西部開拓時代の改変歴史という設定がそれほど活かされていないこと、ゾンビ(腐れ人)自体はそれほど話に絡まないこと、などが気になりましたが、同じ世界を共有したシリーズものがいくつか書かれている、というゆるい縛りのようです。(※ただ、シアトル地元民にはご当地SFとして馴染みの場所が出てきて面白いのかもしれませんね)

 というわけで基本的には、生まれる前にいなくなった父を求める子の話――と、父を探しに危険区域に向かった息子を探す母親の話――という、二つの愛情が主軸となって進む物語でした。

 父レヴィ・ブルーがゾンビガスを掘り起こしたときに、牢屋に取り残された囚人たちを独断で解放したのが祖父メイナードだった――というわけで、祖父は良識ある一部からは眉をひそめられるも、一部からはヒーローとして崇められている存在で、そんな崇拝者たちはメイナードの恩を忘れず、娘であるブライアや孫であるジークに手を貸す――という設定にしろ。

 義手のおばさんルーシーや全身鎧ずくめのジェレマイアやぶっとんだお婆ちゃんミス・アンジェリンといったキャラの立った登場人物にしろ。

 少年漫画のような痛快さに満ちていました。

 地下世界の支配者ドクター・ミンネリヒトなんて、何だかまるでダース・べーダーみたいで、笑っちゃいました。

 ブライアはライフルとガスマスクを手に、閉ざされた街へ降り立った――息子を救えるのはあたししかいない! 掘削用ドリルマシン〈ボーンシェイカー〉が暴走し地下の毒ガスが噴出、シアトルの街は見境なく人間を襲う〈腐れ人〉が跋扈する地獄と化し、高い壁で閉鎖された。ブライアは、消えた父を追って街へ入った息子ジークを救うため、自らも壁の内側にむかう……。ネオ・スチームパンクの旗手によるローカス賞受賞作!(カバー裏あらすじより)

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