『猫柳十一弦の後悔 不可能犯罪定数』北山猛邦(講談社ノベルス)★★★☆☆

 携帯やネットの普及で成立させるのが難しくなった「クローズド・サークル」というジャンルに意識的に取り組んだ作品。犯人側に「見せる」意図があるクローズド・サークルを設定することで、見立てという一見不合理な行為も「見せる」ために必要だったという二重の問題をクリアすることに成功していました。

 大学の探偵助手学部に通う君橋《クンクン》と月々《マモル》の気分はどん底だった。名門ゼミ入り審査に落ち、悪ふざけで希望を出した知名度ゼロの猫柳ゼミ行きが決まったから。そう、指導教官は功績不明かつ頼りなげな女探偵・猫柳十一弦。彼女の下では立派な探偵助手にはなれないのか(涙)? だが名門ゼミとの合同研修が決まり、人生大逆転めざし孤島の館へ。その合宿中、奇怪な連続殺人事件が発生する!(カバー裏あらすじより)

 


 【ネタバレあらすじ】 そしてもう一つ、連続殺人ものにおける「探偵が犯罪を阻止できない」という問題にも意識的に取り組んでいるのが本書です。頼りなさげで、すぐに泣く、しかし犯人の先を読んで犯行を未然に防ごうとする猫柳十一弦の「後悔」は、初めて被害者を出してしまったことだった……という、犯罪が起こる前に解決してしまう超絶「名探偵」ゆえに、名探偵としては記録されないという、なかなかに皮肉な設定でした。

 まあ正直ミッシング・リンクは「だからなんなの」レベル(七つの単位)でしたが。。。

 第一の犯罪と第二の犯罪は、犯人にとってアリバイを作る必要があるため、ミステリとして凝っていました。壁に書かれた何気ない「どくガスちゅうい」の文字が、被害者にみずから箱(実は箱にこそ毒ガスが詰まっていた)のなかに逃げ込ませる意図を持っていた。そして被害者に杭が打たれ蓄光塗料が服全体に塗られていたという過剰な装飾に、そうしなければいけない意図があったと見抜き、杭=犯行方法を特定する傷を隠すため、塗料=一部だけ塗られた塗料を塗料で隠すため、→ アリバイ作りと合わせて、遠距離からの殺人だと推理=蓄光塗料を目印にして闇夜にボウガンで殺害、という真相。この二つはよかった。【/ネタバレあらすじお終い】


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