『生者の行進』石野晶(ハヤカワ文庫JA)★★★★☆

 タイトルのとおり、生きている者たちがどう生きるか、の物語。

 母親を憎んでいる従兄弟・隼人を好きになってしまったのに、その母親に似ているがために従兄弟からは好きになってはもらえない従姉妹・冬子は、従兄弟のものをすべて奪うことにした……。隼人から親友も奪った冬子だったが、親友ができたといって美鳥という同級生をつれてきて、好きな人ができたといって隼人のことは忘れた。だが好きな人・スオウは……。

 いちおうミステリ仕立て。犯罪もある。ではあるものの、ミステリというよりは青春小説。甘くて苦い。

 美しく奔放な従妹の冬子に、隼人は高校生にいたる今まで、悩まされていた。冬子は友達を作らず、隼人が親しい友人を作れば恋を仕掛けて奪い捨てる。そんな冬子が初めて連れてきた女友達が美鳥だった。だが隼人の目前で、美鳥がドッペルゲンガーを見たと言って倒れ……喪った命と絶望の記憶に苛まれる少年少女が出会うとき、幼い心に刻まれた罪の時間が動き出す。痛ましいまでに繊細な、煌めく若者たちの青春群像ミステリ。(カバー裏あらすじより)

 


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