麻耶雄嵩による的を射た解説がついているので、単行本で読んでピンと来なかった方も再読する価値はあります。
本格ミステリが論理もどきであるのなら、こんな裁判もどきも今までないのがおかしかった。ましてや推定無罪や検察側の立証責任なんていまだに日本人にはわかりづらいのだから、印象づけたモン勝ちというのはわかりやすい。
ロマンチックべたべたな第一章から始まり、一章ごとに視点が変わることにこんな意味があったとは。
被告人側としては真犯人=ルージュをさがすのが疑いを晴らす一番の近道のはずが、嘘や屁理屈をフォローして傍聴者に印象づけるために、本筋からはずれまくり。検察側が用意したルージュが嘘だと言い張るためにあからさまに偽物の偽ルージュを仕立て上げる無茶っぷりが、けれどそのまま叙述トリックでもあるというねじれ具合。
祖父殺しの嫌疑をかけられた御曹司、城坂論語《しろさかろんご》。彼は事件当日、屋敷にルージュと名乗る謎の女がいたと証言するが、その痕跡はすべて消え失せていた。そして開かれたのが古より京都で行われてきた私的裁判、双龍会《そうりゅうえ》。艶やかな衣装と滑らかな答弁が、論語の真の目的と彼女の正体を徐々に浮かび上がらせていく。(カバー裏あらすじより)
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