『伏 贋作・里見八犬伝』桜庭一樹(文春文庫)★★★★☆

 そのころ江戸では「伏《ふせ》」と呼ばれる人獣が人を襲うことが増えたため、伏狩りがおこなわれていた。猟師の少女・浜路《はまじ》は、兄・道節《どうせつ》に呼ばれ江戸に出て来て、伏狩りに参加することに。

 ――というのが、現在パートの物語です。

 そして、その伏の始祖となる人犬が生まれる由来を、馬琴の息子・冥土が安房の国に取材して綴ったのが、「贋作・里見八犬伝」という作中作です。父親である馬琴も同じ伝説に取材して『南総里見八犬伝』を著している最中ですが、冥土によると自分の作こそが真実という触れ込みです。

 つまり現在江戸の町で伏たちが狩られているのは、真「八犬伝」の後日譚ということになるわけですが、これが八犬伝に捉われない内容で、八犬伝というよりも魔物を狩るゾンビ・ハンターもののような物語が斬新でした。

 しかもそのハンターたるや、江戸の町を猟銃を携えて闊歩する少女と、妖刀・村雨丸を手にした大男の兄のコンビという、ここらあたりはさすがラノベ出身と感心してしまうような、絵的にもキャラ的にも引き込まれずにはいられない者たちなのです。

  


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