『ミステリー・ゾーン』39「魅いられた男」「憎悪の家」
「魅いられた男」(Printer's Devil,1963.2.28,ep111)★★★★★
――ダグラス・ウィンターの新聞社は倒産間近だった。植字工のアンディもジャーナル社に移籍するという。命を絶とうとしたダグラスは、不思議な男に声をかけられた。スミスという男は驚異的な速さで活字を拾い、自分には事件を嗅ぎつける嗅覚があると言う。
チャールズ・ボーモント脚本(原作「悪魔が来たりて――?」)。スミス役はバージェス・メレディス。悪魔との契約ものですが、後半になると、デスノートのようなものに名前を書かれた状態から如何にして恋人を助けるかというサスペンスになるところがひと味ちがいました。葉巻をくわえながらピアノを弾くように写植機を操るメレディスの、颯爽として且つ飄々とした演技が見どころです。
「憎悪の家」(Uncle Simon,1963.11.15,ep128)★★★★★
――バーバラは偏屈で変人のおじである科学者サイモンの家で奴隷のようにして暮らしていた。憎しみ合う二人が言い争うなかで、サイモンは階段から落ちてしまう。助けを求めるサイモンに対し、ただただバーバラは憎しみをぶつけるだけだった。やがて明らかにされた遺言によれば、実験を続けるのが相続の条件であった。
人造人間の姿形こそ安っぽく滑稽なものですが、人間時代から続く憎しみの感情を、死してなお生き長らえさせてゆく嫌らしさおぞましさには、ぞっとしました。さらにはターミネーターのように甦ってきたのには、背筋が凍りつきました。アップになったバーバラの最後の台詞、「おじさん」に、絶望が滲み出ていました。
『ミステリー・ゾーン』39「歴史のかきかえ」「真夜中に呼ぶ声」
「歴史のかきかえ」(No Time Like the Past,1963.3.7,ep112)★☆☆☆☆
――ポール・ドリスコルは過去に戻って歴史を変えようとしていた。日本が爆撃されるのを知らせようとしたが、敵国外国人として捕えられてしまう。次にはヒトラーを狙撃しようとしたが……歴史を変えることは諦め、19世紀のアメリカで過ごすことに。だが出会った女教師と恋に落ち、その後に起こることを知ったドリスコルは……。
何だか安っぽい脚本です。ダナ・アンドリューズの演技もキャラも声優も野暮ったいうえに、試みるアプローチがことごとく間抜けで、陳腐なストーリーを補強できる良さがありませんでした。
「真夜中に呼ぶ声」(Night Call,1964.2.7,139)★★★☆☆
――老婦人エルバ・キーンが寝ていると、無言電話が二度もかかってきた。それが気になって仕方がない。翌晩、今度は受話器から呻き声が聞こえる。だが電話局に問い合わせても、そんなはずはないという冷たい答えが返ってくるのみ。
リチャード・マシスン脚本。1963.11.22の放送が延期され、1964年に放送された作品。死に近づいているからこそ死者の声が聞こえるという類のものかと思っていたところ、とんちの効いた怪談噺を裏返したような結末が待っていました。それはさておき途中経過の呻き声が何よりもまず怖い作品でもありました。
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