『ミステリマガジン』2015年5月号No.710【新ミステリ・ハンドブックを作ろう!】

「『新ミステリ・ハンドブックを作ろう!』座談会(前編)」小山正×上條ひろみ×杉江松恋×宮脇孝雄
 『特捜部Q』シリーズが「「相棒」ファンにはぴったりではないかしら?」というコメントを読んで、「ああ、なるほど」と思いました。「ハードボイルド」という言葉やジャンルを用いずに、チャンドラーやロス・マクドナルドが再評価されるのはよいことです。

「作家評論」
 ディーヴァー、ルヘイン、トマス・ハリス、コナリーら、『新ミステリ・ハンドブック』収録候補作家たちに関する評論。

「つぐない」イアン・ランキン/延原泰子訳
 ハンドブック候補作家の短篇。
 

「数藤康雄氏クリスティーを語る」

「ペイパーバックを繰りながらあの頃の話をしよう(1)」小鷹信光

「迷宮解体新書(86)降田天」村上貴史

「ミステリ・ヴォイスUK(88)チャールズ・モルデカイ」松下祥子
 

「三つの事件」マルセル・エイメ/島津智子訳(Trois faits divers,Marcel Aymé,1933)
 ――闇夜のこと、二人の殺人犯が鉢合わせした。フィナールとゴンフリエはたちまち意気投合した。二人とも八時四十五分に妻を殺してきたのだ。浮気を知られて愛しい妻を悲しませたくないため発作的に。牛の世話をしない女房が謝らなかったのでかっとして。俺たちは悪い人間じゃない。それがこんな目に遭うなんて……。

 殺人犯が自己正当化の果てに、同類が集う善人たちの理想郷を夢見る、というブラックな話ですが、犯人が二人とも自分語りのおしゃべりが大好きなので、自慢合戦のようなくだらない雰囲気が醸し出されていました。三人目の〈犯人〉をきっかけに、化けの皮が剥がれたのか、露悪という自慢の延長なのか、ドタバタも極まりますが、(いくら我が身と引き比べたとはいえ)それを見たコキュの感慨が哀れすぎます。
 

「書評など」
ポケミス『猟犬』、高田大介『図書館の魔女 烏の伝言』、ジュディ・バドニッツ『元気で大きいアメリカの赤ちゃん』など。
 

「G坂の殺人事件」三津田信三

「ジョンと技師の足指」北原尚彦

「追悼・陳舜臣

「Crime Column(384)」オットー・ペンズラー
 著者自身も原稿を紛失していた、『アラバマ物語』の続編『Go Set a Watchman』が見つかり、刊行予定。正確にはこちらが先に書かれていて、スカウトの回想シーンが評価されたために、スカウトの子ども時代の『アラバマ物語』が完成したということのようです。

「書評など」
◆アンドリュー・メイン(Andrew Mayne)『Angel Killer』。黒魔術師《ウォーロック》と名乗る人物が起こす事件を、奇術師一族に生まれたFBI捜査官ジェシカが追う。

  


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