乱歩没後50周年だそうで、乱歩特集です。特に『人間豹』に焦点が当てられていて、こうした切り口の特集は編集者の意思が見えて好感が持てます。……とはいえ、「幻想と怪奇」特集すら日本勢に浸食されてしまっているのは悲しい。海外作品の紹介に力を注いだ乱歩でもあるのに。。
「人間豹変幻」新保博久
「銀色のサーカス」A・E・コッパード/西崎憲訳(Silver Circus,Alfred Edgar Coppard,1927)
――死んでしまった虎の代わりに、虎の皮をかぶってショーに出てくれと頼まれたハンス。ライオンと対峙するはめに――。
乱歩『人間豹』のなかでも、文代さんが熊の皮を着せられて見世物で虎に襲われるシーンに着目し、同じような場面のある「銀色のサーカス」から、結末の違う初出バージョンが訳出されています。悲哀を感じさせる悲劇といった決定版と比べ、シュールなコントみたいな結末でした。「銀色のサーカス」のネタは、上記新保氏のエッセイによれば、「西洋小話(あるいは都市伝説)」がもとになっているようです。
『人間豹(一部抜粋)』江戸川乱歩
『江戸宵闇妖鉤爪―明智小五郎と人間豹―(一部抜粋)』岩豪友樹子
『人間豹』を原作とした歌舞伎台本。因果応報や勧善懲悪が取り入れられているところに独自性を感じます。
「座談会 現代へ続く江戸川乱歩」日下三蔵×新保博久×千街昭之
「小特集 追悼ルース・レンデル」
「ビギナー向け海外ミステリ・ガイド はじめてのアガサ・クリスティー」霜月蒼
「ミステリ・ヴォイスUK(90)ミスター・ホームズ」松下祥子
引退後のホームズを描いた映画『ミスター・ホームズ(A Slight Trick of the Mind)』について。
「迷宮解体新書(88)櫛木理宇」村上貴史
『Nemuki+』連載の『ホーンテッド・キャンパス』はわたしには合わない作品でしたが、そうしたラノベ系ではない作品『赤と白』『寄居虫女』『避雷針の夏』『チェインドッグ』といった作品のなかから、「小学校の頃の同級生がこの町に戻ってきたことと、クラスの人気者の仲間だった一人の女性とが、その輪から追い出されたこと」をきっかけに、高校生である主人公たちの「心のバランスは徐々に乱れ始める」『赤と白』や、タイトルが印象的な『避雷針の夏』はぜひ読んでみたい。
「書評など」
◆スティーヴン・キング『ドクター・スリープ』は『シャイニング』の36年ぶりの続編。わたしは映画版しか見てませんし、キングの濃ゆい文体が苦手ですが、それでもこれは気になります。
◆ほかにレオ・ペルッツ『スウェーデンの騎士』、『マルセル・シュオッブ全集』は必読です。ポケミスからは南米アルゼンチンのグスタボ・マラホビッチ『ブエノスアイレスに消えた』。
「ゲーム『大逆転裁判』発売記念」麻耶雄嵩×巧舟 対談
「その設定はシナリオを書くのが難しいですね!」というのがさすが物を書く人の感想だと思います。
◆台湾映画『共犯』は、「登校途中に同じ学校の女生徒の死体を発見」し、「それまでなんの接点もなかった三人の少年たちだが、少女の死の真相を探りはじめる」という、なかなか魅力的な設定の映画です。
◆DVDでは『フィルム・ノワール ベスト・コレクション』に「フランス篇」が登場。シムノン原作『署名ピクピュス』『パニック』はそれぞれ『メグレと謎のピクピュス』『仕立て屋の恋』が原作。『パニック』はデュヴィヴィエ監督作品。新作シムノン『青の部屋』も。