ここ数年で盛り上がりを見せている「こわい絵本」の特集です。「絵本」の紹介ということで、ページの大半は絵で占められています。解説やリファレンスは最小限。パッと見て直感的に「これだ!」と感じた絵本との出会いがあるはずです。狭義の「こわい」絵本にかぎらず、「不思議」「奇妙」「おばけ」「死」といった広い範囲にわたった「幻想と怪奇」の絵本が紹介されていました。
宮沢賢治/伊勢英子『ざしき童子のはなし』は、コワカワイイ童子がキュートです。明るく暗い色遣いに引き込まれます。
かないだえつこ絵『三まいのおふだ』は昔話の再話絵本。版画の黒と線が印象的です。
さいとうよしみ絵『耳なし芳一』は、紹介文にもあるとおり「大胆なアングル」がカッコイイ。色遣いがゲームっぽい感じもしますが。
岡田嘉夫『四谷怪談』の鏡と蝙蝠の組み合わせが美しくも怖い。
軽部武宏『大接近!妖怪図鑑』は、その名の通りの妖怪図鑑で、「大接近!」とはつまりドアップなのです。子ども向けの妖怪図鑑らしいテキトーな解説付きです。
マーサ・メイヤー作/いまえよしとも絵『おしいれおばけ』。兵隊のヘルメットをかぶった坊やと、いかにも気の弱そうなおばけが可愛い。
佐野洋子『おばけサーカス』。もはやおばけなのか何なのかもどうでもよくなります。オレンジを基調に、もこもこした何かがたくさんいます。
せなけいこ『ねないこ だれだ』、中川学『化鳥』、ショーン・タン『アライバル』、ヴォルフ・エァルブルッフ『死神さんとアヒルさん』、〈怪談えほん〉シリーズ、斎藤隆介/滝平二郎『モチモチの木』、谷川俊太郎/沢渡朔『なおみ』。
ガブリエル・バンサン『たまご』は、パッと見は黒い鳥が描かれているだけ。紹介文を読んでからよく見ると、下の方に小さな人間が描かれており、鳥がとてつもなく巨大なのだということに気づきます。寓話風の物語。
穂村弘/酒井駒子『まばたき』は、まばたきしている間に目の前で起こっていることを三つの場面にしているようです。
チャールズ・キーピング『まどのむこう』。少年が窓越しに見た景色。何が起こっているかは最後になってもわからないようです。
ミュリエル・マンゴー作/カルメン・セゴヴィア絵『黒グルミのからのなかに』。母親を守るため死神を黒グルミに封じ込めてしまったために、死がなくなってしまった世界。画面一杯に描かれた黒いフードと黒い鎌が恐ろしいです。
ニコライ・ポポフ『なぜ あらそうの?』。些細なことがきっかけで起こった、カエルとネズミの戦争が描かれています。正直、可愛いんですが。。。うすら怖い。
スーザン・バーレイ『わすれられないおくりもの』は、柳田邦男のエッセイで、幼い子どもに「死」とはどういうことかを伝えるために小児科医がこの本を読み上げたと紹介されています。
レーヴィ・ピンフォールド『ブラック・ドッグ』。ページいっぱいに描かれたリアルな黒犬の迫力に圧倒されます。「イギリスの伝説である『不吉な黒い犬』」だそうです。
土屋富士夫『もっちゃう もっちゃう もう もっちゃう』は、おしっこを洩らしそうな男の子の前に立ちはだかる、奇妙なトイレの数々。紹介されているのは迷路のトイレ。
谷川俊太郎/中辻悦子『よるの ようちえん』。タイトルがいいですよね。幼稚園のモノクロ写真に、子どもの落書きのような「何か」が描かれています。
エドワード・ゴーリー『ギャシュリークラムのちびっ子たち』。アルファベット順に次々と死んでゆく子どもたち。自殺ウサギ系統の作品です。
ビアトリクス・ポター『こわいわるいうさぎのおはなし』は、ピーター・ラビットの作者が描いた「いい子」ではない「悪いうさぎ」の話。
ジョン・クラッセン『ちがうねん』。ジョン・クラッセンは『MONKEY』のこわい絵本特集でも紹介されていました。
[楽天]