「『王とサーカス』刊行記念 米澤穂信特別インタビュー」
「真実の10メートル手前」米澤穂信★★★★☆
――破綻した新興企業の社長と広報兄姉が、姿を消した。妹から、姉を捜してほしいと頼まれたジャーナリストの太刀洗は、残された通話の内容をもとに、カメラマンをつれて山梨県幡多野町に来ていた。
『王とサーカス』と同じシリーズの最新短篇。推理力というものも何に役にも立たないし、ジャーナリズムというものも何の役にも立たない……のでしょうか。少なくともこの探偵は、意図せざるも殺す側に立っています。
『王とサーカス』「著者より」「担当編集者より」
「もっと知りたい! 江戸川乱歩の世界」
「海外の研究者が解釈する乱歩作品」宮本和歌子
マーク・シルバーによる「人間椅子」解釈。乱歩自身が関わった英訳を理由に、美醜のコンプレックスを、日本人の欧米コンプレックスと読み解く。たぶん、違う。
「三鷹の森ジブリ美術館探訪 幽霊塔の秘密」
「『みんなの少年探偵団プロジェクト』を振り返って」戸川安宣
「屋根裏の監視者」市川哲也★★☆☆☆
――平石美海は職場の同僚で、親しかった仲がどういうわけか険悪になっていた。廃屋撮影が趣味の俺は廃屋で偶然会った平石に「さわらないで! 汚いからっ!」と叫ばれ、思わず殺していた。俺はいったん自動車を取りに戻ったが、いざ死体を運ぼうとすると、外から女子中学生の話し声がする。俺は死体をソファに隠し、押入れから屋根裏に隠れた。
これはひどい。「屋根裏の散歩者」「人間椅子」「二銭銅貨」などへのオマージュが散見されるものの、ダダスベリのギャグは読んでいてひたすらつらかったです。
「幾度もリグレット」円居挽★★★★☆
――課題の冒頭には「この物語を読んだ上で、自由に続きを書いて下さい」とある。芸術家になりたくて木こりをやめた男が、生活のため家具を作り始めると、家具どころか家まで作るはめになり、しかも評判がよかった。やがて男は老人になり、芸術のインスピレーションも枯れたころには、いつしか病に冒されていた、そんな話だ。これは著者自身の話なのだろう。では公子は、著者にどういう言葉をかければよいのか。
物語についての物語。言葉についての物語。そしてある意味では、アンチ・ミステリでもあります。問題を解くように、そして推理をするようには、答えは出ません。だからといって「答えはない」「答えはいくつもある」というわけでもありません。
「私はこれが訳したい(23)斎藤倫子 DAS FLIEGENDE KlASSENZIMMER」
ケストナー『飛ぶ教室』です。今さら――と思うかもしれませんが、ひねりの利いた、けれどちゃんと共感もできる、上手いエッセイのお手本のような理由がありました。
「来日記念 フェルディナント・フォン・シーラッハ インタビュー」
次回予定の戯曲『テロ』は、「テロを裁くということ」の「モデルケース」といった社会性もさることながら、「有罪か無罪か白黒つけるのを観客にゆだねる構成」ということで、いっそうミステリとの親和性が高そうです。
「ミステリ・ライブラリ・インヴェスティゲーション 魅惑の翻訳ミステリ叢書探訪記(23) 河出冒険小説シリーズ その2」川出正樹