『La Jangada』Jules Verne,1881年。
前半は娘の結婚式のため筏に乗ってアマゾン川を下って町を目指すという、正直に言って冒険小説としてもお世辞にも面白いとは言えない内容でした。
それが後半に入って一転します。何と父親は冤罪をかけられた脱獄囚。無実の証拠と引き替えに娘を要求されますが拒否。密告されてふたたび身柄を拘束されてしまいます。処刑のタイムリミットまでに失われた証拠を見つけなければ!――ところが見つかった証拠は暗号で書かれていました。そこで父親を捕まえた判事さんが正義感からというよりも知的好奇心から暗号に夢中になって取り組むのですが、これが下手な暗号ミステリよりも緻密で詳細なものでした。ミステリ的なアイデアあふれる暗号ではなく、実用的な暗号なので面白味がないといえばそうなのですが、憑かれたように暗号の型と可能性をまくしたてる判事さんの姿は、読んでいてわくわくしました。タイムリミットのサスペンスと相まって、異様な緊迫感に満ちていました。
証拠を持った人物の死体をさがしに川に潜るシーンもサービス満点で、潜水服を着て川に潜り電気ウナギと戦い砲声とともに死体が浮き上がる場面は、ちょっとスケールの小さな『海底二万里』といってもいいくらい心が躍りました。
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