『星籠の海(上・下)』島田荘司(講談社)★★★☆☆

 面白い! ぶ厚い上下巻を一気読み……ではありますが、御手洗ものなのに大トリックがないのが物足りません、食い足りません。

 対黒船兵器「星籠」の謎よりも、辰巳洋子が起こした狂言強盗の意外な展開と真相がミステリ的には一番の見どころでした。でもこれ、いいとこ中篇ネタかなあ。実際のところ星籠の正体は見え見えで、謎どうこうよりも、最後に実物の星籠を登場させてしまうロマンが素晴らしかった。

 歴史の謎と現在の事件をつなぐキーワードは、護国国防。日本人嫌いな(と思われている)島荘にしては珍しい。しっかり権威としての医者批判はしていますけれど。護国であって愛国ではない感じだし。

 御手洗がこだわっている黒幕の大物ぶり悪党ぶりがまったく伝わってこないので、読んでいて御手洗のやる気が空回りしていました。

 御手洗がホームズばりのはったり推理を多用しすぎて別人みたいです。

 冒頭の石岡君の記述によれば、この事件が二人で一緒に飛び回った日本で最後の事件だそうです。

 瀬戸内海の興居島で、この一年で損傷した男の全裸死体が六体も発見されたが、島には殺人も行方不明者もない。御手洗と石岡は実験によって「機械仕掛けの海」をたどり、福山市を訪れると、そこで待ち受けていたのは連続する不可解な死亡事件。犯人の手がかりはなく、被害者の身許もわからない。町はいましも新興宗教団体に支配されようとしていた……。

 恋人・千早に誘われて鞆から東京に出た小坂井だったが、目的もない小坂井を尻目に、千早はスターへの階段を上ろうとしていた。そんな矢先、不幸な事故に遭い、千早は女優生命を断たれてしまう。故郷の鞆に戻った二人だったが、もともと押しの弱い小坂井はそこで新興宗教に救いを見出す。やがて出来た新しい恋人・洋子から深夜に呼び出された小坂井は、衝撃的な事件に巻き込まれる……。

 老中・阿部正弘が書き残していたとされる黒船対策の出陣計画図が発見され、福山の研究者は色めき立っていた。黒船の横には「星籠」という文字が――。もしや、黒船を攻撃するための兵器が開発されていたのでは――。福山市立大学の滝沢加奈子助教授は、星籠の謎を解こうと必死になるが、ストーカーにつきまとわれ……。

 ばらばらの断片が示す真相は――。

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