『十三回忌』小島正樹(双葉文庫)★★☆☆☆

 島田荘司との共著でデビューした著者による単著デビュー作。

 序盤で発生した真夏の雪と列車事故の謎は、早くも中盤に差し掛かる前に早々と解かれてしまいます。これが島荘流の絵になる奇想で、こんなに早く謎解きされてはもったいないと感じてしまいましたが、列車の謎を死体の在処や山火事と結びつけて解決することで、探偵役の明晰ぶりを依頼人や警察にアピールする役割があるのだから、仕方のないところではありました。

 串刺し死体、首なし死体、唇の切り取られた死体、密室内の刺殺体。いかにも見立てといった道具立てがかえって興醒めでしたが、読み終えてみればそれぞれ別の理由があったことが明らかになり(首なしの理由については早い段階で明らかにされていますが)、時代錯誤は免れたものの小粒な印象は否めません。

 奇跡、証拠隠滅、アリバイ、殺人機械(と自殺教唆)と、謎と真相こそてんこ盛りながら、犯人特定の論理が地味で手堅いものでした。

 探偵役は『天に還る舟』にも出てきた海老原浩一。

 巻末エッセイを島田荘司氏が寄稿。『天に還る舟』のどこをどう共著したのかについて知ることができました。

 自殺とされた資産家夫人の不審死。彼女に呼び寄せられるかのごとく、法要のたびに少女が殺される。一周忌には生きながら串刺しにされ、三回忌には首を持ち去られ、七回忌には唇を切り取られていた。そして迎えた十三回忌、厳戒態勢の中、またもや事件が起きた―。巧みな謎と鮮やかな結末に驚愕必至の長編ミステリー。(カバー裏あらすじより)

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