『ミステリーゾーン』56「人形の家で」「ある泉からの一杯」「音と静けさ」
「人形の家で」(Miniature,1963.2.21,ep110)★★★☆☆
――チャーリー・パークスは仕事の休憩時間に博物館でドールハウスを見て、心を癒していた。あるとき、動くはずのない女性の人形がピアノを弾くのが見えた。職場に戻ったチャーリーは、いつまで経っても職場に馴染んでいないとして解雇された。家に帰れば子離れできない母親が待っている。
第4シリーズ(50分)。チャールズ・ボーモント脚本。ウォルター・E・グローマン監督。ロバート・デュバル主演。友人も恋人なく母離れも出来ない、孤独でオタクっぽい好青年をロバート・デュヴァルが好演。真面目さと嫌悪感を併せ持つルックスがはまり役です。狂気を演じるに当たってオーバーアクションにならないところもよいのですが、基本的に外からドールハウスを見ているだけの地味な作品なので、50分はちょっと長く感じてしまいます。
「ある泉からの一杯」(A Short Drink from A Certain Fountain,1963.12.13,ep131)★★★★☆
――ハーモン・ゴードンは40歳も若い妻フローラの言いなりだった。妻を喜ばせようと遊びにも出かけるが、身体がついていかない。思いあまったハーモンは、研究者である弟のレイモンドに、動物実験段階の若返りの薬を注射するよう訴えた。
第5シリーズ。ロッド・サーリング脚本。バーナード・ジラード監督。パトリック・オニール主演。単純明快、ワンアイデアで最初から最後までストレートに押し切った、潔い作品です。若さにこだわった夫の愚かさではなく、若さに驕った妻の愚かさに教訓を与えるような結末に、中年男が書いた脚本らしさを感じるのは穿ちすぎでしょうか。
「音と静けさ」(Sounds and Silences,1964.4.3,ep147)★★★☆☆
――船舶模型会社の社長ロズウェル・フレミントンは、身体も声も大きく、レコードを大音量でかけるのが大好きだった。口を開けば軍隊調で仰々しいため、とうとう妻にも呆れられて逃げられてしまった。その夜、眠っていると水滴や目覚ましの音が大きく聞こえて気になって仕方がない。医者に診てもらったが耳に異常はない。
第5シリーズ。ロッド・サーリング脚本。リチャード・ドナー監督。社長のキャラクター自体がもともと戯画化されたおバカちんなので、ひどい目に遭っても可哀相ともザマア見ろとも思わずに、素直にバカバカしく笑えます。部屋の調度が震えることで大音量を表現しているところも、大げさなくらいでちょうどいいと思いました。
「ふくろうの河」「対決」を残したまま、次の号からは『新トワイライト・ゾーン』(1985)へ。
『ミステリーゾーン』57「動揺日」「静かなひととき」「言葉あそび」「夢売ります」「カメレオン」
「動揺日」(Shatterday,1985.9.27,ep001)★★★☆☆
――バーで間違えて自宅に電話をかけてしまったピーター・ノヴィンズだったが、なぜか電話はつながり、電話に出た相手もピーター・ノヴィンズと名乗った。同じ人間は二人いらない。君のひどい人生は見ていられない、残るのは自分だ、と電話の相手は宣言した。自宅のノヴィンズは、母に優しくし開発の仕事を辞退し、ノヴィンズを追いつめてゆく。
新トワイライト・ゾーン、第一シーズン。ブルース・ウィリス主演。ハーラン・エリスン原作。ドッペルゲンガーやパラレルワールドではなく、神様とピッコロみたいな話です。「被害者であり、同時に勝者」だというナレーションの通り、一見するとアンハッピーな結末ですが、ピッコロではなく神様が残っただけなのでしょう。タイトルはどうやら「Saturday(土曜日)」のもじりのようです。
「静かなひととき」(A Little Peace and Quiet,1985.9.27,ep002)★★★★☆
――主婦のペニーは子どもたちの騒々しい悪戯にうんざりしていた。あるときペニーは、庭で金のペンダントを見つけた。我慢の限界が来て「うるさい!」と怒鳴りつけると、家族みんなが固まっていた。
メリンダ・ディロン主演。「Shut Up !」「Start Talking」の願いが叶うペンダントという日常の悪戯心から一歩進んで、終末のヴィジョンにまで広がるのは、旧『ミステリー・ゾーン』にはない展開です。文字通りの静かな結末が待っていました。
「言葉あそび」(Wordplay,1985.10.4,ep003)★★★★☆
――医療機器のセールスマンであるビル・ロウリーは新製品の名前を覚えるのに苦労していた。そのうち、「百科事典」が子どもを産んだと隣人が言い、時間をかけてこそ「マヨネーズ」が得られると同僚が言いだした。ついには妻までが、昼食のことを「恐竜」と言い始める。
ロバート・クレイン、アニー・ポッツ出演。タイトル通りのただの言葉あそびのように見えて、コミュニケーションがまったく取れなくなるという、地味に怖い作品です。
「夢売ります」(Dreams for Sale,1985.10.4,ep004)★★★☆☆
――家族とのピクニック。夫の声にエフェクトがかかり、チキンが消えた。夫は「大丈夫?」と何度も繰り返す。気づくとどこかの未来的な施設のなかだった。そばにいた男は「また故障か」とつぶやき、「夢体験装置 野原のピクニック」と表示された機械をいじり始めた。
メグ・フォスター、デヴィッド・ヘイワード出演。夢が現実で現実が夢の、ワンアイデアもの。夢は美しいまま、短く潔い作品です。
「カメレオン」(Chameleon,1985.10.4,ep005)★★★★☆
――宇宙船ディスカバリー号で作業していた飛行士が、ロボットアームで青い光が見えたと報告した。地球に戻ったディスカバリー号は、カメラを修理することになった。ところがカメラが青く光るとともに、主任が消えてしまった。隔離室でカメラを検査していると、ふたたび青く光ったカメラと入れ替わりに姿を現した主任を見て、同僚は「主任ではない」と呟く。
テレンス・オクィン出演。異星人による人間のコピーという、SFでは定番の恐怖が描かれます。まだコピーだとわかっている分、信頼に対する揺らぎはありませんが、異星人の意図がわからないことに変わりはありません。理解の不可能性――これも旧『ミステリー・ゾーン』にはなかった点だと思います。