『アフタヌーン』2016.1、『累』7、『週刊少年ガール』3

アフタヌーン』2016年1月号(講談社

おおきく振りかぶって』125「田島の 4」ひぐちアサ
 久々の理論篇。「だと思うんだ。オレはな」。まだ確立された理論ではないからこそ、専門家ではなく、百枝父でなくてはならないんですね。

げんしけん 二代目』118「彼女がフラグを自演乙」木尾士目
 斑目ハーレムのデート、スー篇。ケーコと斑目、波戸と矢島、前進したり後退したりのデート篇ですが、スーの回でも予想もできなかった変化が。

「三途の川でワルツを」久野田ショウ ★★★★★
 ――案の定 車が来ているのに飛び出して……あれ? 頭が痛い……オレ子供をかばって……もしかしてオレ死んだ? それならあの川を渡ると死ぬんじゃないのか? 生きていても何の価値もない。川を渡ろうとしたオレは、誰かに足をつかまれた。2週間くらい前から、死ぬ前にやりたいことリストを実現させたくて、今はスキップに挑戦しているそうだ。

 四季賞2015年秋のコンテスト審査員特別賞受賞作。ありきたりの話をありきたりでなく伝えられる感性の持ち主です。冒頭、ぬいぐるみの歪んだ顔や、「……いらない」のコマから、すでに非凡さが伝わってきます。男同士なのに同性愛臭もさせず不自然さも感じさせないのは、中性的というより無性的なサナトリウムふう美少年と、三途の川という何もない世界のたまものでしょう。「僕を迎えに来た船だよ」からしばらく実際には船を描かないセンスや、説明臭くなりがちな二人の最後のやり取りを素直に読ませてしまう絶妙のコマ割りのバランスもさることながら、最後のページに息を呑みました。鯨幕を単なる背景描写ではなく、意図してデザインに組み込んでいる構成がすごい。

ヴィンランド・サガ』122「狩る者 狩られる者9」
 追いつめたヒルドと追いつめられたトルフィン。双方が納得する解決なんでできるわけのない難問に決着をつけるのは、やはり、掟破りしかありませんでした(が、読者的には納得のできる掟破りです)。

『マイボーイ』22 木村紺
 新キャラも出てきたというのに、次回が最終回!? ず〜っと序盤のまま終わってしまったという印象です。ひととおり主要キャラの紹介が終わって、さあこれから、というところだったと思うのですが。

カナリアたちの舟』最終話「カナリアたちの舟」高松美咲
 宇宙人は結局地球人を理解できなかったし、ユリも千宙のことは理解できないまま、です。けれど千宙のことを、どうしても地球人と同じ感覚で見てしまいます。擬人化、といえばそうなのでしょうけれど。共感とはまた別のベクトルでやりきれなさが残ります。

「妹たち〜続・お姉ちゃんの妹〜」森田るい ★★★★☆
 ――五十代になったお姉ちゃんは、探査中に事故で宇宙に飛ばされた「妹」のコピーを作った。事故の映像を見ながらお姉ちゃんはたずねた。「このときなんで笑ってたの?」

 2015年9月号掲載の「お姉ちゃんの妹」の続編です。インパクトは当然第一作のあっちのほうがありましたが、内容はこちらのほうが強烈です。「お姉ちゃんの妹」という設定がより掘り下げられていますし、50代、70代の二つの世代を通して描かれる二つのコピーが、年齢とかアイデンティティとかいったものを、軽々と飛び越え、軽々としているがゆえに却って鮮烈でした。
 

『累』(7)松尾だるま(講談社イヴにイングKC)
 ニナが死んでしまい絶望していた累ですが、野菊がまさかの救世主に? 野菊としては当然、懐に飛び込むというか虎穴に入るというか、狙いがあるのでしょうけれど。

『週刊少年ガール』(3)中村ゆうひ(講談社マガジンKC)
 最終巻。満月の「魔力」を描いた「フルムーンフレンド」、天使の羽根の意外な真実「君は僕の天使(たぶん)」が出色。

    


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