『ミステリー・ゾーン DVDコレクション』58・59(アシェット)

ミステリーゾーン』58「マヤの秘石」「奇妙な動物園」「ドライバーへの警告」「消えた少年」「魔法のランプ」「帰還兵」

「マヤの秘石」(Healer,1985.10.11,ep006)★★☆☆☆
 ――博物館に盗みに入ったジャッキーは、警備員に撃たれて死にかけたところ、盗んだ宝石を握り締めているうちに傷が治っていた。翌日、死んだ隣人を目の当たりにしたジャッキーは、ふたたび宝石を握り締め祈った……。

 展開がスピーディというよりも駆け足で、説得力がありませんでした。オリジナル・シリーズよりも現代的にあくどい感じに描かれている分、改心も嘘くさかったです。
 

「奇妙な動物園」(Children's Zoo,1985.10.11,ep007)★★☆☆☆
 ――デビーの両親は夫婦喧嘩が絶えない。あるときデビーは『子供動物園』の招待状を友だちからもらい、両親に付き添われて動物園に向かった。動物園の檻のなかにはさまざまな夫婦たちがいて……。

 軽めのショートショートといった味の作品で、ナレーションもありません。過剰演技の夫婦とほとんど感情を見せない少女が好対照でした。
 

「ドライバーへの警告」(Kentucky Rye,1988.10.11,ep008)★★★☆☆
 ――大きな契約をまとめたボブは、はめをはずして飲み過ぎたまま車を運転し、事故で怪我をしてしまう。どうにか車から這い出し、近くにあった『ケンタッキー・ライ』というバーで一服することにした。腕相撲の勝負に勝ったボブは、店主や客からいたく気に入られ、そのバーを購入することになった。

 臨死状態というわかりきったストーリーに、怪しい人物にスポットライトを当てる過剰な演出。途中までは確かにそうでした。けれど死体を実際に見せられると、わかってはいてもショッキングです。しかも因果応報とか悪魔との契約とかそういった筋道の通ったものではなく、不条理な恐怖が印象的でした。
 

「消えた少年」(Little Boy Lost,1985.10.18,ep009)★★☆☆☆
 ――写真家のキャロルは念願の仕事が決まりかけて、恋人グレッグとの間で板挟みになっていた。動物園の仕事に訪れたキャロルは、事務所から派遣されてきたケニーという少年をモデルに写真を撮った。

 ケニーの正体は登場した途端に明らかですが、ケニーはどう考えてもキャロルではなくグレッグの方を変えようとアプローチすべきでしょう。写真家に向かって「レンズを通していては何も見えやしない」なんて言葉を口にする男を、選ぶわけがない。しかも最後はバラしてしまうという掟破り。子どもだからなあ。それにしてもあまりに重い選択を迫り重い十字架を背負わさせてしまっています。
 

「魔法のランプ」(Wish Bank,1985.10.18,ep010)★★★☆☆
 ――離婚後、気分転換にガラクタ市ばかり訪れているジャニス。古くさいランプを見つけ、ふざけてこすったところ、本当に魔法の世界に飛ばされた。三つの願い(1000万ドル、見た目の若さ、元夫の性的不全)の申請手続きをするため役所で延々と並ばされ…。

 お役所仕事のパロディとしてテンポよく進んでいましたが、定時になってジャニスがクレーマーみたいに騒ぎ出すのはやりすぎでした。
 

「帰還兵」(Nightcrawlers,1985.10.18,ep011)★★★★★
 ――土砂降りのなか食堂を訪れた警官によれば、モーテルで銃撃が起き、4人が殺された。犯人の行方は見当もつかない。そんななか訪れた怪しげな男。コーヒーを注文し、薬を飲んだ。ライターには「夜の徘徊者」の刻印。ベトナムで支給されたものだというが、その頃のことは話したくないという。

 『エクソシスト』『フレンチ・コネクション』のウィリアム・フリードキン監督。ロバート・R・マキャモン原作「夜襲舞台」。ベトナム戦争の様子が映像ではなく言葉だけとはいえ、客の口から生々しく語られます。そこから一気にはじける男の罪悪感と悪夢と絶望。そして、さり気なく披露されただけの男の「能力」が、警官の軽率な行動のせいで全開になってからの迫力は、さすがというほかありません。最後に少年が手にするライターが意味深です。
 

ミステリーゾーン』59「屋根の上の少女」「キューピット」「試験日」「時を超えたメッセージ」

「屋根の上の少女」(If She Dies,1985.10.25,ep012)★★☆☆☆
 ――自動車事故で娘キャシーを意識不明の重体にしてしまったポールは、病院からの帰り道、施設の屋根の上に白い服の少女が立っているのを見る。夜中にふたたび現れた少女は、「トビーに会わせて」とポールに頼んだ。ポールは施設の修道女を問いつめて、トビーというぬいぐるみを預かった。

 「いつの日か役目を果たせるよう(神が)サラをこの世に残しているとしたら?」というポールの思いつきの台詞に尽きるのでしょうが、その台詞以外にそれを伝える描写がなく、かなり一方的な話でした。
 

「キューピット」(Ye Gods,1985.10.25,ep013)★★★☆☆
 ――キューピッドが恋の魔法をかけたが、トッドはその女性と恋に落ちなかった。不思議に思ったキューピッドはトッドを直接問いつめたが、馬鹿にされて腹を立て、矢を三本放って消えてしまう。それ以来トッドの頭からあの女性のことが離れなくなった。バッカスの許でキューピッドを見つけたトッドは、何とかしてもらおうとするが……。

 単なる「恋の使者」という意味でなく、多少なりともローマ神話を下敷きにしているところに面白味がありました。途中までは、一般的イメージと違うキューピッドが恋路をかき回すだけの話だと思っていたのですが、途中から予想もしない展開になりました。くだらなさすぎて逆に面白かったです。神様たちが人間くさいところはむしろ神話どおり、でしょうか。
 

「試験日」(Examination Day,1985.11.1,ep014)
 ――12歳の誕生日。ディッキー少年は政府の試験を前にわくわくしていたが、反対に両親は不安そうで様子がおかしい。

 舞台は全体主義国家か何かで、天才はその芽を摘まれているということなのでしょうか。原作はヘンリイ・スレッサー「受験日」。
 

「時を超えたメッセージ」(A Message from Charity,1985.11.1,ep015)★★★★☆
 ――熱でうなされている少女は、大きな獣のうなり声(自動車)の悪夢を見ていた……現代に生きるピーターもまた同じような熱にうなされ、そこにはいないはずの看病者の姿を見ていた。ピーターが次に目を覚ますと、1700年の世界にいた。と思えば空には飛行機。

 タイムトラベルではなく、時間を超えた「感覚の共有」を映像で表現するという試みが面白い作品です。必然的に視覚と聴覚が中心になります。魔女狩りという災難に見舞われても、見聞きできるだけで実際には何もしてやれない歯がゆさが緊迫感を誘いました。「時を超えたメッセージ」といえばジャック・フィニイ「愛の手紙」ですが、それと比べるとメッセージの伝え方も内容も単純すぎるのは否めません。原作はウィリアム・M・リー「チャリティのことづて」(『時の娘 ロマンティック時間SF傑作選』所収)。
 

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