『Nemuki+』2016年1月号

 あらまき美里の新作が載っていたので購入。

百鬼夜行抄』111「最後の一人」今市子
 ――山野井の家は死に絶えようとしていた。飯島に頼もう――。だが蝸牛の力を目の当たりにした山野井家の人々は、却って蝸牛を恐れて遠ざけ、祟りは続いていった……。そして現代。晶の弟・潮は女性関係のトラブルを抱えていた。山野井のおばあちゃんのお通夜に向かった八重子は、怪しい素振りの女性を見て、潮のストーカーかと不審がるが……。

 今市子さんの絵は人物の区別がつきづらいので、ネタが明かされてからも潮と律と護法神の区別がつかず混乱しました。もちろん敢えてミスリードを誘っているのでしょうけれど、ネタを明かすときはもう少しわかりやすく描いてほしいところです。それがわからなかったので、女性=敵側、男性=山野井側というのも、一読ではわかりませんでした。
 

「首吊り気球・再来」伊藤潤二
 ――あれから一か月が過ぎ、首吊り気球はほとんど姿を消した。残された気球を調べてみたところ、素材はナイロンのようだ。なぜこんな物が人を襲ったのか。首を吊られていた遺体のほうも、ポリアミド系繊維、つまりナイロンに変質していた……。

 「首吊り気球」の続編。顔が「まるでナイロンのよう」という表現、漫画だから見た目でこそわかりませんが、現実的に考えると嫌〜な表現です。こういうところがセンスなのでしょうね。台湾で開催された展覧会の様子も特集。
 

『未知庵のきなこ体操』「虫」
 ――写真集を見ていると大量の毛虫が落ちてきた。アイスクリームを食べようとしたら大量の蠅。「オレ、殺虫剤の開発者になろう!!」

「こんな私がスリランカでゲストハウス」東條さち子
 ――スリランカ旅行で知り合った現地人ニッサンカと、合同でゲストハウスを経営しようと考えたが、そのときはまだよくわかってはいなかったのだ……スリランカ人の言うことがいかにテキトーでいいかげんかを……。

「銀の靴」あらまき美里
 ――雨はキライだ。幽霊《わたしたち》は雨で溶ける。足のない少女の幽霊は、からくり時計のバレリーナのように踊るのが夢だった。いつか足だけの幽霊が現れて、自分の足になってくれないだろうか。雨に当たった幽霊は溶けてしまう。溶けた幽霊のなかには海に流れつき、くっつき合って、そこらの幽霊を道連れにするような存在になる。あの世からのお迎えに見立てて「天使」と呼ばれていた。天使も素材は幽霊なので、雨に当たると溶けてしまう。

 幽霊がほんとうにいるのならこの世(あの世?)が幽霊であふれてしまう、というごく当たり前の問題を、天使という自浄作用で説明されています。ロマンチックななかにもこうした暗いリアリティを取り入れているのが印象的です。最後がちょっと駆け足というか、もう少し心に残るシーンがあってほしかったです。
 

  


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