ネタバレするしかない作品なのでネタバレしますが、叙述トリックには、読み終えたあとに抱く感想にいくつかのタイプがあります。
1、物語自体が面白いので何度でも読み返せるもの。
2、「ああびっくりした」で終わるもの。
3、「ああ、上手いなあ」と感心するもの。
4、世界がひっくり返るもの。
この作品自体は面白くありません。舞台が高校なので致し方ないとも言えますが、登場人物全員が厨二病なので読むのが耐え難いです。
では「ああびっくりした」だけで終わるのかと言えばそうではなく、叙述トリックがテーマと結びついている作品ではありました。とは言えあまりにも同じテーマばかりが連なっているので、「上手いなあ」ではなく「あざといなあ」と感じてしまいました。
さて本書は叙述トリックだけの作品ではありません。謎の中心は人間消失の謎――ですが謎の解答自体はどうということはありません。(というかそもそも「謎」なのか何なのか……)。しかし消失の理由が叙述トリック=テーマそのものと関わりがあり、二段構えの衝撃が待っていました。
結論。よく組み立てられているけれどつまらない作品です。
私立藤野学院高校のバスケ部員椎名康は、ある日、校舎の屋上から転落し、痛々しく横たわる少女に遭遇する。康は、血を流すその少女を助けようとするが、何者かに襲われ、一瞬意識を失ってしまう。ほどなくして目を覚ますと、少女は現場から跡形もなく消えていた!? 開かれた空間で起こった目撃者不在の被害者消失事件。複雑に絡み合う青春の傷と謎に、多感な若き探偵たちが挑む。第31回横溝正史ミステリ大賞〈大賞〉受賞作。(カバーあらすじより)