『百鬼園百物語 百間怪異小品集』内田百間/東雅夫編(平凡社ライブラリー)★★★★☆

 エッセイや小説から百話選んで百物語にしてしまおうという、費やされたであろう労力に頭が下がる一冊です。

 現実の父の顔よりも夢に見た父の面影をまざまざと覚えている「三代」。「七面鳥の様」な頸という秀逸な譬喩の登場する「東京日記 その二十一」。どこにもない町に迷い込んだ「東京日記 その四」。虎よりももっと何か恐ろしいものに襲われる「虎」。「夏は明かるくていいけれども蚤と雷に困る」「太古原人の時代に、敵に追っ掛けられるとその場に脱糞して、一つには逃げ出す自分の身体を軽くし、一つには迫って来る敵にいやな思いをさせたと云う旧い本能が私に宿っているらしい」という文章がシュールな「蚤と雷」。口のなかに毛が生えるという現象が生理的に恐ろしい「流渦」。「その女は人間でないように思える」という当たり前すぎる一文が何気なさすぎるがゆえに怖すぎる「百鬼園日記帖 十七」。怪異というよりは忘れられない一夜の出来事「光り物」。

 以上、とりわけ印象に残った小品でした。

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