『消しゴム』アラン・ロブ=グリエ/中条省平訳(光文社古典新訳文庫)★★★★☆

 『Les Gommes』Alain Robbe-Grillet,1953年。

 定められた逃れられない運命に向かって、細部の異なる複数の視点によって進んでゆく、探偵小説的な物語です。

 「消しゴム」や「新聞」や「なぞなぞ」といったピースでゆるく繋がっている断章。すべてが円環状に収まる結末。

 今となってはどこかで読んだような話であることは否めません。

 決められた運命の小説のなかで、決められたことを守らなかった殺し屋によってそもそもの事件が発生しているのが、何とも皮肉でした。

 殺人事件発生の報せを受けて運河の街にやってきた捜査官ヴァラス。しかし肝心の遺体も犯人も見当たらず、人々の曖昧な証言に右往左往する始末。だが関係者たちの思惑は図らずも「宿命的結末」を招いてしまうのだった。〈ヌーヴォー・ロマン〉の旗手、ロブ=グリエの代表作。(カバーあらすじより)

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