『ピグマリオン』バーナード・ショー/小田島恒志訳(光文社古典新訳文庫)★★★★★

 『Pygmalion』George Bernard Show,1912年。

 映画『マイ・フェア・レディ』の原作として名高い、というべきか、著名な劇作家バーナード・ショーの代表作として有名な、というべきか、いずれにしても古典的名作『ピグマリオン』が文庫化されました。

 古典新訳文庫には珍しく、著者名が姓名ともに表記されている……と思ったのですが、もしかすると「バーナードショー」でひとかたまりなのかな?

 映画版とは違う結末の「後日譚」も収録されていて、著者自身が書いたのだから当たり前といえば当たり前ですが、どう考えてもそういう結末のほうが本書の登場人物たちにはしっくりきます。シンデレラ・ストーリーでこそないものの、充分にハッピーエンドだと思いますし、むしろ幸福の型に押し込められるよりはよほど生き生きとしていると思います。

 映画では厳格な教授という印象だったヒギンズ教授ですが、本書ではミセス・ヒギンズが言うようにまさに「子供」そのもので、行儀は悪いし感情的だし口汚いし、イライザからは、発音はともかくマナーについてはピカリング大佐に「本当の礼儀作法を教えて頂いた」と言われる始末です。終盤にやり取りされるヒギンズとイライザの応酬も、ヒギンズが意地っ張りだというわけではなく、もともとそういう人なのだ、ということらしく、これではロマンスの生まれようもないわけですが、この原作版の結末のような関係もさっぱりしていて好きです。

 強烈なロンドン訛りを持つ花売り娘イライザに、たった6カ月で上流階級のお嬢様のような話し方を身につけさせることは可能なのだろうか。言語学者のヒギンズと盟友ピカリング大佐の試みは成功を収めるものの……。英国随一の劇作家ショーのユーモアと辛辣な皮肉がきいた傑作喜劇。(カバーあらすじより)

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