メリナ・メルクーリ、ジュールズ・ダッシン主演。ジュールズ・ダッシン監督・脚本。
ピグマリオンもの、というよりは、娼婦が主役であることからすると、『プリティ・ウーマン』の原型という方が近いでしょうか。
さてわたしはギリシアには馴染みがないので、映画の冒頭で船長が言った「ギリシア人気質」というのがピンと来ませんでした。が、映画を見るに、どうやら「ラテン系」というのとさほど変わらない意味のようです。
意味もなく、グラスは割るモノ。それも勘定のうち。グラスが割れるたびに、まるで音楽の伴奏のように、レジスターをガシャンガシャン言わせるマスター(^^;
アメリカ人のホーマーは「真実を求めて」ギリシアにやって来ます。どうして世界は間違った方向に行ってしまったのか、かつて偉大な文明を誇っていた古代ギリシアにならその答えがあるのではないかと考えて――。
陽気なギリシア人に対し、生真面目な役をアメリカ人が担っているのが、笑えます。わたしの感覚では、アメリカ人も充分にいい加減なイメージなのですが、先の財政破綻から見るにギリシア人の方がその点では上をゆくのでしょう。
ホーマーは、酒場で出会ったイリアという娘が美しく優雅でありながら娼婦であることを知り、彼女にこそ真実を見つける鍵があるはずだと考えます。イリアとともに過ごすうち、ホーマーは彼女を「更生」させようと考え始めますが……。
基本的にわいわい賑やかなコメディで、深刻なエピソードも登場せず、楽しく観られる作品でした。
無知なイリアがギリシア悲劇の泣き所で笑い、何でもないところで泣き出す――までなら想定内だったのですが、思わせぶりに肘で小突くシーンには笑ってしまいました。
ホーマーがまた性懲りもなく教科書通りに余計なことばかりして……。中盤ならいざ知らず、終盤になってまでズブーキ弾きのタキを傷つけているのだから救えません。