『ミステリマガジン』2016年9月号No.718【ロアルド・ダール生誕100周年】

ロアルド・ダール生誕100周年」
 純粋な初訳作品はショートショートスモークチーズ」のみで、もう一篇の初訳「リビアで撃墜されて」は『飛行士たちの話』所収「ちょろい任務」の原型短篇。ほかは『飛行士たちの話』から新訳一篇「彼らに年は取らせまい」、『あなたに似た人 新訳版』から二篇「南から来た男」「おとなしい凶器」、常盤新平ロアルド・ダールとの一夜」再録。「スモークチーズ」のオチはとぼけているというよりもサイコパスみたいで怖かったです。

「新訳で読む“ストーリーテラー”ダールの魅力」田口俊樹×杉江松恋

「乱視読者の短篇講義(出張篇) ダールの「願い」を読む」若島正

ロアルド・ダールはいつイギリスの作家になったか」宮脇孝雄

ロアルド・ダールの映像世界」濱中利信
 

「パブ・シャーロック・ホームズの回想」日暮雅通×井上文太トークショー
 NHK人形劇『シャーロック・ホームズ』のパペットデザイン&美術監修のかたです。
 

「小特集 追悼 村上博基
 追悼エッセイはどちらもル・カレ作品についてでしたが、わたしにとってはアイリッシュ作品の翻訳者というイメージが強いかたでした。
 

「書評など」
◆映画はJ・G・バラード原作『ハイ・ライズ』が紹介されています。原作の翻訳者は奇しくも村上博基氏。

国書刊行会の新シリーズ〈ドーキー・アーカイヴ〉第一回配本から、L・P・デイヴィス『虚構の男』ポケミスからレイ・セレスティン『アックスマンのジャズ』長岡弘樹『赤い刻印』、呉勝浩『蜃気楼の犬』、『愉しき夜 ヨーロッパ最古の昔話集』、ジャック・ヴァンス『宇宙探偵マグナス・リドルフ』など。
 

「迷宮解体新書(94)井上真偽」村上貴史
 『その可能性はすでに考えた』の続編『聖女の毒杯』刊行。
 

「小特集 幻想と怪奇――乱歩と漱石をつなぐ」
 副題通り、乱歩と漱石をつなぐ作品、ロシアの作家アンドレーエフ「思想(狂気か正気か)」新訳を中心に、乱歩による冒頭訳(未完)と漱石虞美人草』の該当部分が掲載されています。新保教授による解説つき。アンドレーエフ「狂気か正気か」は、観念的な理由で殺人を決意した語り手が罪を逃れるため佯狂を演じるが、いつしか本当の狂気に陥っていた……という、乱歩が好きそうなのはわかる内容です。たぶんこういう場でもなければ改めて訳されることはなかったであろう作品だし、乱歩と漱石を結ぶ架け橋というのは面白い着眼点ではありますが、いいかげん「幻想と怪奇」を乱歩頼みにするのはやめてほしい。

  


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