『S-Fマガジン』2016年10月号

「海外SFドラマ特集」

ウルフェント・バンデローズの指南鼻(後篇)」ダン・シモンズ酒井昭伸

「浅倉ヴァンス爆誕酒井昭伸
 

「七千六日の少女 怨讐星域 特別篇」梶尾真治
 

「SFのある文学誌(48)危険な洋書とショウの社会改良優生学 松村みね子の幻想世界3」長山靖生
 

「書評など」
 スケットダンスの著者が『彼方のアストラ』というSF漫画を連載中のようです。ほかJ・G・バラード『ハイ・ライズ』、ジャック・ヴァンス『宇宙探偵マグナス・リドルフ』、つばな『第七女子会彷徨など
 

「特集 ケリー・リンク以降 不思議を描く作家たち」

「OPEN」チャールズ・ユウ/円城塔(Open,Charles Yu,2012)★★★★☆
 ――「door」っていう単語が、僕らの部屋のど真ん中に浮いていた。「おしまいだね」サマンサが言った。「そうだね」と僕。今や部屋の真ん中には本物のドアが出現していた。「ドアを開けるつもり?」僕が少しためらっているうちに、サマンサはドアを開けて中へ入っていった。

 今回の特集のなかでは、円城塔訳で銀背に入っている分、既にメジャーな作家といえるでしょうか。メガン・マキャロンの作品にも言えることですが、ファンタジーが特別なことでないうえに起こる出来事さえも特別なことではなく、どこにでもありふれた男女の行き違いが描かれています。
 

「弓弦をはずして」ユーン・ハ・リー/小川隆(Unstringing the Bow,Yoon Ha Lee,2006)★★★★☆
 ――歳月が流れ、女は園芸と製本というわれらの日常に組みこまれていった。ナンモリにたいして、われらはこう語った。世界は音と静謐のなかにある。われらはその発話の秘密であり、その心の静謐である。いつの日か、われらは書かれるべきことすべてを書くだろう。

 扉のタイトルは「弓弦をひらいて」と誤記しているというお詫びの言葉が掲載されていました。自由だった言葉と文字が、閉じ込められてしまうまで。
 

「魔法使いの家」メガン・マキャロン/鈴木潤(The Magician's House,Meghan McCarron,2008)★★★★☆
 ――魔法を習おうとしたのは、ママにうるさくいわれたからだ。乗馬やダンスを習いなさいと言われたから、魔法ならいいと言ってしまったのだ。魔法使いは背が高くて痩せていた。「きみには才能がある」胸がぎゅっと締めつけられた。

 チャールズ・ユウの作品にはまだドアという露骨なアイテムが用いられていましたが、本作などはもはやただの不倫の話です。特定の職業ではなく魔法使いが相手だからこそ、誰でもあり得る普遍性を持ち得ています。
 

「ワイルド家の人たち」ジュリア・エリオット/小川隆(The Wilds,Julia Elliott,2007)★★★☆☆
 ――ワイルド家が家の裏に越してきた。兄弟のいちばん上は顎鬚をはやした十七歳で、いちばんちびはもじゃもじゃ頭の半裸姿だった。「おまえは何者だ?」とわたしにいった。そのとき、何かが枝に飛び乗ってツリーハウスが揺れた。窓から狼男のマスクがのぞき、笑い声をあげた。

 ありふれたあっちの国のティーンの話から、突如として襲い来るファンタジー。こういう現実との関わり方は、ちょっとジョイス・キャロル・オーツっぽいとも思った。
 

藤井太洋トークイベント採 『オービタル・クラウド』大ヒット記念!」聞き手:塩澤快浩

「池澤春奈&堺三保のSFなんでも箱#33 〔ゲスト・多崎礼採録

大森望の新SF観光局(52)エリスン・ワンダーランド」

「『スター・トレック』50周年記念特集」

「宝はこの地図」草上仁

「幻視百景」(4)酉島伝法
 食べて、食べられるものたちの、それぞれ。
 

  


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