『アリス・イン・ワンダーランド』(Alice in Wonderland,2010,米)★★★★☆

 ティム・バートン監督。ジョニー・デップミア・ワシコウスカ、ヘレナ・ボナム=カーター、アン・ハサウェイクリスピン・グローヴァーほか出演。アヴリル・ラヴィーン主題歌。

 アリス物語の後日譚という体裁の作品で、ワンダーランド(アンダーランド)は大人になることからの逃避であり通過儀礼であるという位置づけとなっていました。折りしもワンダーランドは赤の女王の恐怖政治のさなかであり、アリスの成長はワンダーランドを危機から救うことと同義であることを考えると、これを境にアリスは大人になり、今度こそ二度とワンダーランドに行くことはないのだろう……という感じなのに、続編公開されますね。

 注目すべきは、ワンダーランドをファンタジーではなく悪夢として描いている点です。ティム・バートン監督の面目躍如でしょう。まあそれも、バンダースナッチが手なずけられるところや、ハートのジャックのデカアタマ好きあたりから、あやしくなってくるのですが……。

 赤の女王がそこまで悪人に見えないので、クライマックスを終えてもさほどカタルシスがないのが玉に瑕でした。――が、それを補って余りあるマッドハッターのファッターワッケンでした。

 勝手に決められた婚約から逃げ出したアリスは、白ウサギの後を追って、穴に落ちてしまう。トウィードルダムとトウィードルディーらに案内されて、芋虫アブソレムと会ったアリスは、自分が預言の書に記された救世主だと知らされる。直後、バンダースナッチに襲われみんなとはぐれてしまったアリスは、チェシャ猫の案内でマッドハッターたちのお茶会に参加する。かつて白の女王の王室御用達の帽子屋だったハッターは、白の国を破壊したジャバウォッキーを倒し、赤の女王の独裁を打ち破ることを夢見ていた。

 芋虫やトウィードルダムたちの外見は比較的おとなしいものでしたが、気違いっぷりが全開のマッドハッターや、トランプ兵という概念を吹き飛ばすトランプ兵たちの装甲には、目を見張るものがありました。

 後日譚とはいいつつも、赤はトランプのハートなのに、白はチェスという、やや不思議な取り合わせで、きっちりとした後日譚というよりは、漠然と「両『アリス』世界」がイメージされているようです。ほかに『スナーク狩り』や『シルヴィーとブルーノ』らしき言及もありました。

  


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