『ボルジア家風雲録(上・下)』アレクサンドル・デュマ/吉田良子訳(イースト・プレス)★★★☆☆

 『Crimes célèbres』「Les Borgia」Alexandre Dumas,1840

 この作品には二つの特徴があります。一つには「評伝」だということ、二つ目は「ロマンスや冒険」が描かれないということです。とはつまり、ロマンスのある冒険小説を描かせれば生き生きとした筆の冴えを見せるデュマの魅力が封じられている、ということにほかなりません。

 同じく『著名犯罪集(有名な犯罪)』の一篇で邦訳のある『メアリー・スチュアート』は、評伝ではありましたが政治や歴史などどこ吹く風で、バランスが悪いがゆえに却ってところどころでデュマの筆が冴えていたものでしたが。それはもちろん、この作品にも最大瞬間風速はあるんです。でもそれが少ないし小さい。チェーザレの逃亡シーンくらいでしたか。

 忌憚なく言わせてもらえば、評伝が読みたいならデュマではなく他のかたの作品を読みます。

 十五世紀末、イタリアでは小国が乱立し、スペインやフランスなど強大な隣国の狙うところとなっていた。カトリック教会の総本山ヴァチカンも内外の勢力に翻弄されつづけていたが、巧みな駆け引きと財力によって、枢機卿ロドリーゴ・ボルジアは教皇アレッサンドロ6世として即位、教会勢力の強化に動き出す……。ルネサンス期イタリアを熱く駆け抜けた一族、その華麗なる軌跡!(カバーあらすじより)

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