『奥様ご用心』(Pot bouille,1957,仏/伊)★★★★☆

 ジュリアン・デュヴィヴィエ監督。ジェラール・フィリップダニエル・ダリュー、ダニー・カレルほか出演。エミール・ゾラ『ごった煮』原作。

 アパルトマンに引っ越してきたオクターヴ・ムレ(ジェラール・フィリップ)は大の女好き。ジョスラン家の母親は、金もルックスもあるムレに次女のベルト(ダニー・カレル)を嫁がせようとするが、ムレには結婚する気がないことがわかってあっさり別の冴えない男と結婚させる。収まらないのは一人その気になったベルトだった。布地店「婦人の幸せ」の女主人カトリーヌ・エドワンヌ(ダニエル・ダリュー)からすげなくされ退職したムレは、ライバル店の妻となっていたベルトと関係を持ち始めた……。

 出てくる男女が皆好色な人たちで、誰かが誰かと浮気してます。世のなかに不真面目な人と真面目な人だけしかいないのなら、それでそれなりにうまく行くのでしょうけれど、タチが悪いのがルックス以外とりえのないおぼこ娘ベルトのような存在です。「遊び」と割り切れずに最後まで一人で「愛」だと勘違いし続けるのは、作品のなかでも異質な存在でした。あからさまに女中に馬鹿にされても気づけないんだから救えません。愛なら愛でもっと上手に浮気すればいいんですけどね。

 自業自得で大恥かいたベルトに代わり、個人的に一番美人だと感じたエドワンヌ夫人とくっついてくれたのはハッピーエンドでした。

 冒頭のぎゃーぎゃーうるさいジョスラン夫人と、アパルトマンの玄関にまるごと馬車が入ってくるのとで、インパクト充分な導入部でした。

  


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