『幽』vol.26【特集 夢野久作】

 夢野久作特集では、「木魂」の原型「線路」のほか、父・茂丸と祖父・龍丸による怪談、三作家によるトリビュート短篇、怪談紀行、エッセイ、能楽鼎談、作品案内。トリビュート短篇では、『ぼぎわんが来る』『ずうのめ人形』の澤村伊智による「居酒屋脳髄談義」が秀逸。「脳髄は物を考える処に非ず」をモチーフにした酒飲みの場の屁理屈に思われたものが――モチーフを活かしつつ、怪談としてもきちんと「落とし」てありました。
 

「ソトバ・コマチ、カヨイ・コマチ」アーネスト・フェノロサエズラ・パウンド円城塔
 直訳シリーズの第7回は、ハーンに代わって謡曲二作。

「事故物件」高橋葉介
 珍しくちゃんと怖い話でした。

「幽的民譚 ゴーストリイ・フォークロア(14)屍蝋燭の話」南條竹則
 

千早茜インタビュー」
 デビュー作『魚神』が泉鏡花賞受賞で、新作『夜に啼く鳥は』は八百比丘尼伝説がベースと聞いて、俄然興味が湧きましたが、書影イラストが……。

せなけいこインタビュー」
 『ねないこだれだ』の絵本作家。筋金入りのおばけ好きだったんですね。

「座談会 怪談/幻想文学研究がエンタメとなる日まで!?」一柳廣孝×今井秀和×大道晴香×茂木謙之介
 〈怪異の時空〉シリーズ第一弾『怪異を歩く』刊行記念の座談会。書評コーナーの紹介によると、カランコロンの牡丹灯籠とゲゲゲの鬼太郎という取り合わせが興味深い。
 

「ブックレビュー」
『幻想と怪奇の英文学II――増殖進化論』は、取り上げられている作家自体がアカデミックな作家になってしまったとのよし。

京極夏彦『虚実妖怪百物語』全3巻は、『帝都物語』の加藤保憲によって妖怪が跋扈するようになった現代日本で繰り広げられる、「馬鹿話・無駄話・妖怪談義」だそうです。京極氏による妖怪ものは読みたいのですが、悪ノリがどこまでされているかが心配です。

◆ほかにシャーリイ・ジャクスン『絞首人』、サーバン『人形づくり』、澤村伊智『ずうのめ人形』など。
 

  


防犯カメラ