『S-Fマガジン』2017年2月号No.719【特集ディストピアSF】

映画『虐殺器官公開記念のディストピアSF特集です。声優(?)と監督と企画プロデューサーのインタビュウと、巽孝之岡和田晃による評論、ディストピアSF作品ガイド、小説3作など。岡和田氏の評論は樺山三英ドン・キホーテの消息』に言及されていました。
 

「セキュリティ・チェック」韓松/幹遙子訳(Security Check(安検),Han Song/Ken Lieu,2014)
 ――厳しいチェックを受けないと地下鉄にも乗れなくなったアメリカ。そんななかチェックなしで素通りする女性がいた。いったいどうやって? その女にこだわるわたしは友人から、アメリカを出ることをすすめられる。

 中国語からケン・リュウが英訳したものの重訳です。アメリカや現代社会に対する諷刺はともかくとして、中国に関してはギャグにしかなっていないところが反応に困ります。笑うべきなんでしょうか。いや笑ってしまいましたが。。。
 

「力の経済」セス・ディキンスン/金子浩訳(Economies of Force,Seth Dickinson,2014)
 ――レイドが子どものころ。星にやってきたルーム。阻止するためにあらゆる対策が取られたが……(袖惹句)

 人に感染するルーム(loom)と感染者に対抗するためドローンによる駆除がおこなわれている世界。
 

「新入りは定時に帰れない」デイヴィッド・エリック・ネルスン/鈴木潤(The New Guys Always Work Overtime,David Erik Nelson,2013)
 ――労働者問題を解決するために連れられて来たのは、過去の世界の炭坑夫だった。水曜日にも炭坑夫がやって来た。木曜日には職人が。ところが金曜日にやって来たのはみすぼらしい少年少女だった。

 現実を皮肉った軽いユーモアが漂っているからこそ、たとえベタでもシリアスが生きていました。
 

「SFのある文学誌(50)ダンセイニとアイルランド文芸復興 松村みね子の幻想世界4」長山靖生

「書評など」
ティム・バートンミス・ペレグリンと奇妙なこどもたちは、『ハヤブサが守る家』が原作だそうですが、スチール写真を見るかぎり完全にバートン印です。この写真を見るだけでわくわくするなあ。

◆短篇集がたくさん出ました。伊藤典夫翻訳SF傑作選 ボロゴーヴはミムジイ』、ケイト・ウィルヘルム『翼のジェニー ウィルヘルム初期傑作選』、『万華鏡 ブラッドベリ自選傑作集』、『ロシアSF短編集』

◆『ルドルフとイッパイアッテナ』の作者・斉藤洋によるアーサー王伝説のリライトアーサー王の世界〉第1巻『魔術師マーリンと王の誕生』は楽しみですね。
 

「近代日本奇想小説史 大正・昭和篇(29)大正末期のジュヴナイル小説4」横田順彌

「幻視百景」(6)酉島伝法
 

  


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