『奇談蒐集家』太田忠司(創元推理文庫)★★☆☆☆

 本当の奇談を聞きたくて、新聞広告を出している老人・恵美酒《えびす》。そんな恵美酒に話を聞かせるために、今日もバー「strawberry hill」を誰かが訪れるのだった……。

 基本的なパターンは、「客が奇談を語る」→「恵美酒が喜ぶ」→「恵美酒の助手・氷坂《ひさか》が推理した真相を語り、奇談は現実に解体される」という流れです。

 影が七つある男が、八つ目の影に刺された話。古道具屋で見かけた鏡のなかの美女の生まれ変わりと結婚した話。下手くそな手品をしている予知能力のある魔術師に、命を救われた話。袋小路から消え去った、女の子を攫う「水色の魔人」の話。屋敷は元のままなのに長年住んでいる住人だけが変わっていた話。邪眼を持つ子供の話。奇談を求める奇談小説家の話。

 致命的なのは、額縁のなかの奇談が面白くないということです。さらに致命的なのは、真相もさして面白くないということです。

 結局のところ現実的なオチをつける以上、奇想の翼を無制限に広げるわけにはいかない――現実に回収できる範囲内でしか風呂敷を広げられない――というのが痛かったのだと思います。

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