『もっとも危険なゲーム』ギャビン・ライアル/菊池光訳(ハヤカワ・ミステリ文庫)★★★☆☆

 『The Most Dangerous Game』Gavin Lyall,1963年。

 森谷明子『れんげ野原のまんなかで』の第五話で、登場人物が子供のころ読んで探していた、「彼女はしっかり張った顎を砕かれたら、最高の整形外科医に治療させるだろう。それからまた顎を突き出して、次の困難に挑んでいくだろう」というような文章のある「黄色い背表紙」の本というのが、これでした。

 実際の文章(P.187)はちょっと少し違い、出てくる場面もカッコイイシーンでも何でもなく、ヒロイン(?)が料理している場面なので、この文章を覚えていた二人が図書館で出会えたのは奇跡的だったと思います。子どものころにライアルを読んだのならそれは確かにインパクトはあったのだとは思いますが。

 猛獣狩りに飽きた富豪のホーマーは、最後に残された熊狩りを楽しみに、フィンランドとロシア国境の森に出向く。ビル・ケアリはパイロットとしてホーマーに雇われたが、ホーマーは狩りをする様子もない。そんななか、町でチンピラに襲われたり、寒い時期に飛行機のエンジンが発火し不時着するのを目撃したり、公安警察から尋問を受けたりと、ケアリの周りで不穏な出来事が起こり始める。さらにアメリカからホーマーの妹が訪れ、兄に会わせろとケアリに迫るが、詳しい事情を話そうとはしない。やがて、とうとう飛行機「事故」による死者が出た……。

 タイトルの「もっとも危険なゲーム」とは、武器を持った人間と撃ち合うことで、ホーマーはスパイの護衛を頼まれていたのでした。で、起こった殺人はすべてこのスパイともう一人のスパイが犯人ということで、傍迷惑な人たちだな……。前半のテンポがゆったりしていたうえに、こんな身内のごたごたみたいなことに付き合わされても、肝心の「もっとも危険なゲーム」がしらけてしまいました。

  


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