『被害者は誰?』貫井徳郎(講談社文庫)★★★☆☆

「被害者は誰?」★★★★☆
 ――亀山俊樹の家の庭から見つかった白骨死体。亀山は犯行を認めたものの、被害者が誰なのかは答えようとしなかった。亀山の家から見つかった手記には、殺したいと考えていた三人の女性の名前が浮かび上がった。白骨の主は三人の誰なのか。あるいは十年前に離婚した妻なのか――。捜査一課の桂島は、先輩で推理作家である吉祥院のもとを訪れた。

 現代日本の町を舞台に『被害者を捜せ!』をやる以上、警察が本腰を入れれば被害者を見つけるのは時間の問題――ということで、かなりくだけた感じの作品になっています。が、そこはそれ。アクの強い被害者候補たちと、桂島と吉祥院のしょーもない掛け合いに気を取られていると、足下をすくわれます。「犯人当て」としてはわりと難易度の低いシンプルな仕掛けだとは思いますが、それだけに「やられた」感が強いです。
 

「目撃者は誰?」★★★☆☆
 ――人妻である美春との浮気を目撃され、「二万円」を脅迫された俺は、あのとき明かりのついていた部屋の人間が怪しいとにらんで、目撃者さがしをはじめた……。一方警視庁捜査一課の桂島は、友人の薬師丸から奇妙な相談を受けていた。会社の同僚を含めた三人に、心当たりのない旅行券二万円分が送られて来たというのだ……。

 これはすごいというか何というか、探偵の推理すら使い捨てです(^^;。くだけた作品のふざけた探偵だからこそ、ですね。一筋縄ではいかないとわかっていながら、どうしたって「真目撃者」さがしに注意を払ってしまいます。吉祥院が推理したように脅迫状が「赤毛」パターンらしいとは嫌でも察しがつきますが、その動機となると完全に著者の術中にはまっていました。
 

「探偵は誰?」★★★☆☆
 ――ネタに詰まった吉祥院先輩が、学生時代に遭遇した事件を小説にした。個人が特定できないように脚色したが、念のためチェックしてほしいと言われた。もちろん脚色してあるので、どの登場人物が先輩かはわからない。解決編の前まで読んで誰が先輩かを当てられたら、お昼をおごると言う。

 探偵探しを成り立たせるために選んだ趣向は作中作。といっても探偵探しの方はおまけみたいなもの。やはりメインは作中の探偵が解決する殺人事件と犯人の特定方法にあります。二段構えの消去法のロジック(1.明かりの在処。2.嗅覚障害)が光っていました。
 

「名探偵は誰?」★★★☆☆
 ――ぼくが車に轢かれて入院している先輩の見舞いに行くと、加害者だというかわいい女の子も見舞いに来ていた。先輩は口でいうほどもてないから、女の子を前にどぎまぎしていた。だが女の子は先輩と話すでもなく、プリンを買ってから別の階でエレベーターを降りた。

 これまでの「○○当て」とは趣向が違い、何を探せばいいのかが事件の全貌が冒頭で明らかになりません。とは言え探すのは「名探偵」なのでしょうから……読者は果たして「普通なら絶対にあり得ない」「とんでもない謎」に気づけるでしょうか。

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