『ミステリマガジン』2017年9月号No.724【シャーロック・ホームズは永遠に】

「「SHERLOCK シャーロック」1〜4 元ネタ徹底解説対談」日暮雅通×北原尚彦

「〈シャーロック・カフェ〉トークイベント」高橋葉介×日暮雅通
 

「最後の事件」ブリス・オースティン/日暮雅通(The Final Problem,Bliss Austin,1946)
 ――EQMM短篇コンテストの応募作品に良作を見つけたエラリイ・クイーンは、応募作品を改稿したいという応募者の教授に原稿をいったん返却した。教授の名はジェイムズ・モリアーティ。審査員のクリストファー・モーリーとハワード・ヘイクラフトの目の前で、そう説明したエラリイが、葉巻を喫った直後に頓死した。

 ホームズ譚を下敷きにしたクイーン・パロディです。ホームズがらみに必然性はありませんが、〈クイーン父子の災難〉というぶっとんだ内容といい楽屋モノな内容といい、パロディらしいパロディです。
 

 ホームズ特集はほかに正典「六つのナポレオン」「瀕死の探偵」、エッセイなど。ほかにコリン・デクスター追悼特集でもホームズ・パロディ「花婿は消えた?」が掲載されています。
 

「書評など」
『彼女たちはみな、若くして死んだ』チャールズ・ボズウェルは、ウォー『失踪当時の服装は』に影響を与えた犯罪実話集。

ラノベからは二作。森川智喜『バベルノトウ 三途川理VS赤毛そして天使』。天使によって未知の言語しか話せなくなってしまった依頼人のため、探偵二人がその言語の法則を解き明かしてゆこうとするが、探偵もまた天使によって……、という内容。井上真偽『探偵が早すぎる』には、事件が起こる前に解決してしまう探偵が登場します。どちらも講談社タイガ

青木知己『Y駅発深夜バス』は『本格推理』シリーズに掲載された表題作を含む短篇集。増田忠則『三つの悪夢と階段室の女王』は、「主人公が極限状態での選択に迫られる」という、面白そうながらなかなか心臓に悪そうな作品集。ほかに貫井徳郎『宿命と真実の炎』、澤村伊智『ししりばの家』、山本巧次『開化鐵道探偵』

◆SFからはジーン・ウルフ『書架の探偵』。エッセイからは有栖川有栖『ミステリ国の人々』、北村薫愛さずにいられない
 

「おやじの細腕新訳まくり(5)」

「家族の問題」マージェリー・アリンガム/田口俊樹訳(Family Affair,Margery Allingham,1960)
 ――かのメアリー・セレスト号よろしく、一軒の家から若夫婦が姿を消した。朝食も残されたまま、干してあったシーツとともに二人は消えていた。

 有名な消失事件になぞらえられた人間消失で、HOWではなくWHYにフォーカスされています。タイトル通りの笑い話のような真相ですが、目撃証言そのものが手がかり(というか動機)になっているなど、造りはしっかりしていました。
 

  


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