ライツヴィルもの第一作。
事件が起こり、容疑者が捕まり、リンチが起こりかねない群集心理がわき起こり、小説の盛り上がりは最高潮に達します。「推理」ではどうすることもできない輿論の怖さ。ただしそこから結末にいたるまでは、拍子抜けするほど普通の本格ミステリでした。
何よりも探偵エラリイの存在が邪魔くさくてしょうがない。悲劇を背負いもしなければ苦悩もしていない、結局のところ「事件を解決、はいさようなら」の今まで通りの名探偵でしかありません。せっかくの(?)悲劇の興が醒めてしまいました。
解決編が「後日譚」なのは苦肉の策ではあるのでしょうが、何か、もったいない、作品でした。
結婚式直前に失踪したジムが、突如としてライツヴィルの町に戻ってくる。三年間じっと彼の帰りを待っていた婚約者のノーラと式を挙げ、幸福な日々が始まったかに見えた。ところがある日、ノーラは夫の持ち物から奇妙な手紙を見つけた。そこには妻の死を知らせる文面が……旧家に起こった奇怪な毒殺事件の真相に、名探偵エラリイが見出した苦い結末とは? クイーンが新境地に挑んだ代表作を新訳で贈る(カバーあらすじより)
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